峰守雑記帳

小説家・峰守ひろかずが、見聞きしたことや思ったことを記録したり、自作を紹介したりするブログです。峰守の仕事については→ https://minemori-h.hatenablog.com/

同人誌「私家版金沢妖怪事典」出ます(出します)

 えーと、どこから話せばいいものか。

 わたくし、少し前まで、金沢を舞台にした「金沢古妖具屋くらがり堂」という妖怪ものの小説を書いておりました。全四巻で発売中です。

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 この「くらがり堂」シリーズを書いていた時から、舞台である金沢ゆかりの妖怪の情報をぼちぼち集めてまして、その一部は小説に出ていただきました。

 ただまあ、「くらがり堂」は古道具の妖怪たちの話でして、「道具系の妖怪」という縛りがありましたし、必ずしもご当地妖怪ばかりが出てくる話でもなかったので、この時はそこまで熱心に集めたわけでもなく。

 で、その後ご縁があって、また金沢を舞台にした妖怪ものを書かせていただくことになりました。

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「少年泉鏡花の明治奇談録」、ポプラ社より2023年8月3日発売(される予定)です。

 金沢出身の文豪・泉鏡花の少年時代を描くという設定の連作で、本作の舞台は明治二十年代初頭の金沢。怪異や神秘を愛する少年・泉鏡太郎(後の鏡花)が怪しい噂に首を突っ込んで謎を解いたり、後に手掛ける作品のモチーフを得たりする……という感じの話です。面白いのでよろしくお願いいたします。

 で、これを書くとなると、作中の時代(明治二十年頃)までに金沢で知られていた怪談や伝承を一通り抑えておく必要がある。手頃な資料があればそのまま使えるんですけど、案外ないんですね、これが。

 というわけで、ちょっと本腰を入れてExcelでリストアップを始めたんですが……これがまあ、やってもやっても終わらない。

 元々古い記録の多い町ですからある程度多いのは予想してましたが、二百件を超えたあたりで「もうそろそろリストアップは止めてプロット作って小説書き始めたほうがいいんじゃないか」と思い始め、四百件を超えたあたりで「これはもう事典にできるんじゃないか」と思うようになりました。

 金沢の妖怪の面白いのは、多いだけじゃなくて幅が広いというところでして。

 鬼に天狗に河童に幽霊に火の玉、狐狸に貉に大蛇にカワウソ、各種異類婚姻譚といった主なジャンルは大体揃っています。さらに、金沢城で起こった怪事件、江戸時代の武士や町人が語った奇妙な噂、多種多様な学校の怪談から戦後の未確認飛行物体まで、大変にバラエティ豊かなんですよ。素晴らしいことです。

 で、ここでいきなり話は変わりますが、以前「私家版滋賀県妖怪事典」という同人誌を作ったことがあります。

 
 タイトル通り滋賀県に伝わる妖怪の記録をまとめたもので、この時の項目数は824でした。これに比べて、金沢の方はなんだかんだで608件になりました。さすがに滋賀の方が数は多いですが、滋賀は全県なのに対し金沢は一市町村だけでこの数です。滋賀県民としては立場がありません。さすが県庁所在地。さすが百万石の町。

 で、ここまで増えると正直Excelだと見づらくて仕方ないし、プリントアウトして束ねた方が見やすいわけで。じゃあせっかくだから同人誌にするか!

 というわけで出来上がったのがこちらになります。

 ページ数は190、項目数は先述の通り608!
 表紙は「私家版滋賀県妖怪事典」の時と同じく、漫画家の久正人さんにお願いしました。

 金沢を代表する(「石川の昔話」的な本には大体載ってるので代表格と見なされてるのは間違いないでしょう)妖怪、長谷部国重の名刀を持つカワウソと、金沢の学校で語られた怪談の中でも最古の部類で、個人的に大好きな妖怪「目が四つで頭三角の大化け物」が、城を挟んで向かい合うという大変クールな構図です。ありがとうございます!

「私家版滋賀県妖怪事典」の時と同じくA5サイズの二段組み、五十音順に妖怪を紹介する形式ですが、変わったところもあります。人は成長するので。

 

☆ここが変わった!①……コラムあります

 事典類を買ってみたものの、頭から順に読む元気はないし、かといってどこから読めばいいのか取っ掛かりもないし、なんとなく棚に眠らせたままになってしまう……ということはありませんか? 私はあります。

 で、そういう時にありがたいのが、軽く読める読み物コーナー。というわけで今回はコラムを六本(!)掲載しています。金沢の妖怪をざっくり抑えたいときはここだけ読めば大丈夫。たぶん。

 

☆ここが変わった!②……「をも見よ」追加!

 その項目と関連性が高いと思われた項目を、紹介分の文末に「→」で紹介しています。続けて読んで理解度を深めよう!

 

☆ここが変わった!③……「施設・場所別索引」追加!
滋賀県妖怪事典」の索引は地域別と種類別だけでしたが、今回はその二種に加えて「施設・場所別索引」を追加しました。便利!

 城や神社や河川など、怪異が出たとされる場所別に引けます。さらに、寺院や山など項目数の多いものについては、「○○寺」「○○山」など、固有名別に検索できます。なお便利!

 

 

☆ここが変わった!④……出典まとめました

滋賀県妖怪事典」では全て出典別に別の項目を立てていましたが、今回は、明らかに同じ事柄についての記録は一項目にまとめ、章末に参考文献を並べることにしました。ちょっとはページ数を減らせたと思います。

 

 以上、「私家版金沢妖怪事典」の紹介となります。いかがでしたか?(ブログをやるからには言ってみたかった)

 地元在住の方が金沢への理解を深めるために、あるいは金沢観光のお供に、そして「少年泉鏡花の明治奇談録」の副読本としても使える(←ここ大事)便利な一冊「私家版金沢妖怪事典」、boothで発売中です。

 二度と再び手に入らぬ犠牲的大出版((C)井上円了)、よろしくお願いいたします。

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 あと、「私家版滋賀県妖怪事典」もいくつか残ってましたので、あわせて再販しておきます。こちらもたぶん二度と再び手に入らぬ犠牲的大出版((C)井上円了)、よろしければご一緒にいかがでしょうか。

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 では最後に、「私家版金沢妖怪事典」より、個人的に好きな妖怪を紹介しておきます。わけがわからなくて妙に印象に残ってるやつです。

いかがでしたか?