峰守雑記帳

小説家・峰守ひろかずのブログです。主に新刊やイベントの告知に使っています。峰守の仕事については→ https://minemori-h.hatenablog.com/

いつも隣にビエがいた ―アマビエ出現事例集 二〇二〇~二〇二三―(後編)

(先の記事の続きです)

 

第五期 Ìnconsistent(相容れない、両立する、一貫性のない)―悪役としての採用、あるいは様々な視点からの考察の開始など、一貫性がないように見えるほど扱われ方が拡大する―

 

《81》妖怪「アマビエ」の出自 : "Medico della Peste"(ペスト医師)の面影
(文学論藻95号 二〇二一・〇三・一五)

 このころになるとビエブームを扱った論考や論説も多く出てきたが、その中でも印象的だったもの。文学理論・文化論・都市論などを専門とする武・アーサー・ソーントン氏による論文で、東洋大学文学部日本文学文化学科発行の論文集に掲載された。

「アマビエはヨーロッパの「ペスト医師」の姿を日本の庶民の趣向に変形させたもののように思われるのだ。ペスト医師のガラスの目と尖った長い鼻は、輝く目と小鳥のくちばしのような口元になったのではないか。ペスト医師の長いコートとその下にわずかに出ている靴は、魚の鱗に覆われたずんどうの体の下に見える尾びれのような三本足になったのではないか。なぜ三本足なのか。三本目の足は、「ペスト医師」が常に携行していた杖の名残りだったのかもしれない。また、日本には、古来、時として奇形を神の使いのように尊ぶ風習がある。三本足の八咫烏がいい例だ。こうして、ヨーロッパでは疫病治療と死神の具現という、恩恵と恐怖の絡み合った姿が、日本ではその恩恵の面のみが強調された姿になったのではないだろうか。」という独創的な内容なのだが、そうなのだろうか。

 

《82》朝日川柳 西木空人選
(朝日新聞 二〇二一・〇三・一六)
アマビエも匙(さじ)を投げ出す人出かな(神奈川県 石井彰)

 朝日新聞に掲載された川柳で、コロナ禍が一段落して突然人出が増えたことを題材としている。二つの意味で時代性を感じさせる一首。

 

《83》飛び出し坊や「ビワイチ」仕様に アマビエ姿でサイクリング

(毎日新聞 二〇二一・〇三・一九)

 琵琶湖畔のホテル「琵琶レイクオーツカ」(大津市南小松)に、疫病退散の御利益があるとされる「アマビエ」と、琵琶湖を自転車で一周する「ビワイチ」を掛け合わせた「飛び出し坊や」が登場した。発案者は飛び出し坊や愛好家で、ビワイチ達成経験もある同ホテル支配人の山極明宏さん(54)。「自転車を頑張ってこいでいるアマビエの姿を通して、元気や勇気を届けたい」と力を込める。(略)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が首都圏などに発令され、世間が暗い雰囲気に包まれていた今年1月。山極さんの夢にアマビエが現れた。アマビエは山極さんの私物の自転車に乗って、ホテル前の琵琶湖から登場。その後自転車を置いて湖に戻っていったという。夢の内容をホテルの従業員に伝えると、「何かのお告げでは」と作製が決定。約2カ月で完成した。

 アマビエモチーフの「飛び出し坊や」が作られたことを報じる記事だが、ただブームに乗っかったのではなく、夢告げを受けて作られたものであり、しかもその夢が「琵琶湖から自転車に乗ったビエが出てくる」という類を見ない内容であるあたりが素晴らしく、現地まで現物(写真参照)を見に行き、アマビエ飛び出し坊や煎餅まで買ってしまった。

 



 なお、このホテルは先の二〇年六月にもアマビエをモチーフにした「飛び出し坊や」を作製している。

 

《84》鳥インフルエンザの終息願い「トリビエ」像設置 千葉 いすみ

(NHKニュース 二〇二一・〇三・二三)    

 千葉県内では去年12月以降、いすみ市などにある11か所の養鶏場や農場で、鳥インフルエンザが相次ぎ、ニワトリおよそ456万羽が殺処分されました。鳥インフルエンザの終息を願うとともに、殺処分されたニワトリを供養しようと(以下略)。

 コロナだけでなく鳥インフルエンザの収束と、さらに処分された鳥たちの慰霊までもがビエに背負わされたケース。アマビエは元々鳥要素が強いデザインなのにそこに鳥を足すのか、とは思った。

 

《85》2万本のチューリップで描く妖怪「アマビエ」

(FNNプライムオンライン 二〇二一・〇四・一三)

 滋賀県米原市では、2万本のチューリップが見ごろを迎え、疫病退散の妖怪「アマビエ」が描かれています。

 チューリップでビエを描いたことを報じる記事。それだけだとよくある話なのだが、特筆すべきは「きれいですね。毎年来てますけど」「アマビエの形が今年もできてよかった」という観光客のコメント。ビエが一過性のブームではなく年中行事になりかけている。

 

《86》妖怪アマビエ浄瑠璃、上演始まる 山都町・清和文楽館 藩士との恋、切々と

(熊本日日新聞 二〇二一・〇四・二七)

 海で遭難した肥後藩士が竜王の娘(アマビエ)に助けられて夫婦になるが、妖怪の本性を知られたアマビエが身を引く(略)。藩士とアマビエの出会いと別れが切々と語られ、疫病を招く悪役の海法師とアマビエが大胆な演出で相対した。

 新作人形浄瑠璃「肥後アマビエ戀歌(こいうた)異聞」の上演を報じる記事。アマビエがいつの間にか竜王の娘になっている。約一年前には雪女の変装だったことを思うと物凄い出世である。

 なお、鑑賞した鹿児島県霧島市の会社員、前田雅俊さん(61)は「物語も人形の動きも素晴らしく、涙が出るほど感動した。また来たい」と話した」とのこと。

 

《87》魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー

(二〇二一・〇四・二九上映)

 二〇二〇年三月から放映されたスーパー戦隊シリーズ第四四作「魔進戦隊キラメイジャー」と、同シリーズの前作「騎士竜戦隊リュウソウジャー」が共演するVシネマ。発売・配信に先立って劇場でも公開された。

 本作に登場する怪人「カントクマイナソー」は、映画監督をモチーフにした悪役ではあるが、光る目、クチバシ、長い髪のように見えるヒレ、全身を覆うピンク色の鱗、三本目の足に見える尻尾など、アマビエを強く想起させるデザインとなっている。また、このカントクマイナソーは劇中に数バージョンが登場するが、うち一体は「BIE(ビエ)」というネオン文字とアマビエを描いたネオンサインを頭上に掲げている。なお、「マイナソー」は「リュウソウジャー」に登場する怪人の種族名(総称)。

 このデザインについて、デザイナーである久正人は「スーパー戦隊怪人デザイン大鑑 戦変万化2011―20221」にて、「「幻獣+マイナソー」というのがマイナソーの名前なので「アマビエマイナソー」というのがデザイナー側から出した名前です。モチーフは2020年から話題になっている妖怪アマビエです」「(頭上に座っている映画監督の骸骨の:引用者注)椅子はディレクターズチェア風にもしています。人間を通して自分の(思った通りの)絵を描かせるというのがアマビエっぽいなと思いモチーフにしました。特撮史上初のアマビエキャラを狙ったんですが、名前がなぁ……」とコメントしている。

 ビエが明確な悪役のモチーフになったのは筆者が知る限りこれが初めて(唯一)の事例で、アマビエの名を冠していないことが実に惜しい。

 

《88》江戸時代の瓦版から「アマビエ」模写、民衆に配られた札を発見

(読売新聞 二〇二一・〇五・一一)

 江戸時代の瓦版に描かれたアマビエを模写して民衆に配られたとみられる札が、世界遺産・平等院(京都府宇治市)内の塔頭たっちゅうで発見されていたことがわかった。(略)平等院の神居文彰住職(58)が昨年1月頃、塔頭・浄土院の所蔵庫を整理していた際、「疫病退散 尼比恵」と書かれた封筒の中にある札を発見。コロナ禍で全国的にアマビエが知られるようになった同年6月頃に、「少しでも人々の不安が和らいでほしい」との思いで、檀信徒ら約800人に札の複製を配布した。

 ビエの史料は京都大学附属図書館所蔵の一点しか現存しないというのが通説だが、実はもう一点あった! しかもあの有名な平等院でビエブームの前に見つかっていた! という驚愕の事実を報じる記事。

 後日、このアマビエ札をコピーしたグッズ(シール)が平等院で販売された(写真参照)。

 

 

 なお、ここで発見されたとされる札の意匠は、古物めいた作品を手掛けるクリエイターであるナンブ寛永(南部堂)氏が二〇二〇年三月に作成したグッズによく似ていたことが確認されている。

 また、この件はなぜか他社が一切報じず、続報も出ず、後日(二〇二三年一二月三日)に平等院オンラインストアを確認したところ、先述のグッズは見当たらなくなっていた。買っておいて良かった。

 

《89》原子で描いたナノサイズのアマビエ つくばの研究機関

(朝日新聞 二〇二一・〇五・二六)

 茨城県つくば市の物質・材料研究機構(NIMS〈ニムス〉)は、物質をつくる基本的な粒子である原子を動かせる装置を用いて、疫病退散の妖怪の姿を再現した。ドット絵の大きさは縦横約45ナノメートル(ナノは10億分の1)。細菌などと比べてはるかに小さい新型コロナウイルスでも直径100ナノメートル程度とされ、それを下回るサイズだ。(略)

 新型コロナの感染拡大など、社会の難局に打ち勝つのは科学の力だと訴えるのが今年の催しのテーマだった。担当者は「一般の人がびっくりする科学技術はすでにある。アマビエの絵を通して希望を感じてもらえたら」と話した。

 おそらく史上最小のビエ。

 

《90》東京国立博物館・東洋館 壇蜜「セクメト女神像」の存在感に圧倒される

(週刊ポスト 二〇二一・〇五・三〇)

山下:セクメトは雌ライオンの頭を持ち、人々に癒しをもたらす女神。アメンヘテプ3世は晩年に病気がちで、病気を癒す神様を国内外から幅広く集めました。

壇蜜:今でいうアマビエですね。

 国立博物館のエジプト展を報じる記事の中の一節。古代エジプトの女神セクメトを「今でいうアマビエ」と評するパワフルさが光る。

 これはあくまで壇蜜氏個人の感想かと思っていたのだが、後に同じ展示が京都市美術館(京都市京セラ美術館)に巡回してきた際、セクメト像に「古代エジプトのアマビエ」というキャプションが堂々と付けられていて驚いた。

 

《91》スペインのスタジオが開発した和風サイコホラー『Ikai [異界]』が正式発表。留守をまかされた巫女のもとに悪鬼が忍び寄る。   

(電ファミニコゲーマー 二〇二一・〇六・一一)

『Ikai』は日本の民間伝承からインスピレーションを得た一人称視点の和風サイコホラーゲーム。舞台は封建時代の日本。(略)開発をしたのはスペイン、バルセロナに拠点を置くスタジオEndflame。(略)いったいどういう経緯でスペインの開発スタジオが土着的な和風ホラーゲームの開発に挑戦しようと思ったのか興味はつきないが、パンデミック中に開発したとのことで、イースタエッグで疫病退散にご利益があるとされる妖怪「アマビエ」も登場するという。

 二〇二一年一〇月にPC、PS、Nintendo Switchで発売される海外ゲームの紹介記事。発売神社の留守を任された巫女ナオコが悪霊や悪鬼を避けながら呪いを解くという内容で、ビエも登場したらしい(未プレイのため詳細未確認)。

 

《92》漂着のアマビエ像、守り神に 八代市坂本町から流出、宇城市の戸馳島へ

(熊本日日新聞 二〇二一・〇六・一三)

 豪雨から10日ほど後、宮川さんが、島西側にある自宅前の入り江で、海岸を埋め尽くした漂着物の中から見つけた。(略)道の駅で販売していたチェーンソーアート作品と分かった。(略)傷まないようにニスを塗り、発見した堤防近くに設置。マサキや茶などを供えると、近所の人も手を合わせるようになったという。

 先の漂着アマビエ信仰の続報。水害の際に島に漂着して信仰を集めていた像が道の駅で売っていた商品だと判明したが変わらずに信仰されている、という内容で、一度発生した信仰心というものの根強さを感じさせる。

 

《93》こうして妖怪・アマビエ商品の偽通販サイトで高額請求を受けました。利用明細に潜む巧妙な罠も!

(Yahoo!ニュース 二〇二一・〇七・〇三)

 先月末、50代女性は偽の通販サイトで商品を注文してしまい、価格の130倍もの高額な請求を受けました。(略)今回、詐欺犯らが目をつけたのが、アマビエの商品です。アマビエは古来伝わる妖怪で、疫病を予言したともいわれています。新型コロナへの感染の危険が身近に迫ってきているだけに、疫病退散の願いをこめて作られた商品は、キモかわいい様子で描かれた姿とあいまって、とても人気になっています。彼女もアマビエの商品が大好きで、ネットで気に入った物を見つければ、購入していました。(略)まさに偽の通販サイトは神出鬼没、変幻自在で、それ自体が人に害を加える妖怪的存在といえるかもしれません。何より、人々が疫病退散の願いを込めて作ったアマビエの商品をだしに使い、詐欺の罠を仕掛けるなど、決して許すことができません。

 詐欺サイトの悪質さを周知する記事なのだが、紹介される実例がビエグッズ詐欺。 ビエブーム発生から一年以上経つとこういうことも起こる。こんなに「アマビエに騙されちゃなんねえ」というフレーズが似合う記事もそうそうない。

 

《94》あま~い妖怪大集合 老舗和菓子が販売、SNSで話題に

(朝日新聞 二〇二一・〇七・〇六)

 創業62年の老舗和菓子メーカー「みどり製菓」(大阪市東住吉区)が、天狗(てんぐ)や河童(かっぱ)、座敷わらし、鬼など8種類の妖怪を模した和菓子セット「妖菓子(あやかし)」のネット販売を5月末から始めた。SNSで話題となり、数百個を売り上げている。

 記事本文では分からないが、紹介されているお菓全子八種のうち二種がビエで、「アマビエ兄弟」という名前になっている。五期「鬼太郎」以来、ビエは女性扱いされることが多く、男子のアマビエは珍しい。

 

《95》歌っているのは誰? 「ザ・マスクド・シンガー」大泉洋、Perfume らを魅了するバトルの一部を初公開

(映画.com 二〇二一・〇七・二一)

 Amazon Prime Videoで独占配信される音楽ライブエンターテイメント番組の日本版「ザ・マスクド・シンガー」から、パフォーマンスバトルの一部がYouTubeで披露された。芸能界、スポーツ界、文化界など、各界を代表する12人のスターたちが正体を隠し、歌声を披露する。(略)あわせてキービジュアルも披露され、シンガーの「アマビエ」と「T-REX」の対決に大盛り上がりする様子が描かれている。

 タレントの素顔を隠すための覆面のモチーフとして恐竜などと並んでビエが採用された例。この頃になると疫病退散祈願のような真面目なジャンル以外にも平気でビエが使われるようになってきている。


 
第六期 Establish(世間に認めさせる、確立する) ―アマビエは一時代のシンボルとしての位置を確立する―

 

《96》 第52回星雲賞決定 日本長編部門は林譲治『星系出雲の兵站』コミック部門に『きみを死なせないための物語』『鬼灯の冷徹』

(VG+編集部 二〇二一・〇七・二八)

〈自由部門〉正式名称『疫病退散の妖怪アマビエ』

受賞者 妖怪アマビエ

受賞理由 ”日本人に希望を与えた。”、”コロナ禍にSNSへ投稿されたイラストの数々”、”140年ぶりの流行”

「星雲賞」はSFファンが「優秀なSF作品およびSF活動」を投票で決める賞で毎年選定が行われるもので、その2020年の自由部門にアマビエが選ばれたことを報じる記事。ビエに疫病退散属性が付与されたのも流行したのも2020年代が初めてだと思うのだが、そんなビエを「疫病退散の妖怪」と評し、あまつさえ「140年ぶりの流行」と断じてしまうのはいかがなものか。それでいいのかSF界。

 

《97》朗読音楽劇を披露 「音の郵便屋さん」が公演 浜松・中区

(あなたの静岡新聞 二〇二一・〇八・一六)

 大地の精霊と天女が巨大地震を「アマビエの歌」で鎮め、村に平和を取り戻す内容。ビエ(をモチーフにした歌)は遂に巨大地震すら鎮めるようになった。もう効かないものを探す方が難しい。

 

《98》昨年、動画配信で話題になった「アマビエ三番叟」など、婀の会オリジナル構成での舞踊や邦楽演奏 婀の会「邦楽と物語の泉」シリーズ四 上演決定!

(ロングランプランニング株式会社 二〇二一・〇八・一九)

 ワークショップなども伴った義太夫のイベントで、長唄義太夫コラボレーション新作として「安真病癒三番叟(あまびえさんばそう)」が上演されることを報じる記事。「安真病癒(あまびえ)」という漢字表記が新しい。

 

《99》アマビエが宇宙へ! SpaceBDが新型コロナ終息を願いISSに向け打ち上げ"

(TECH+ 二〇二一・〇九・〇七)

 スペースデリバリープロジェクトは、SpaceBDが国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の中型曝露実験アダプタ(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform: i-SEEP)の利用事業者として選定されていることから対象品を宇宙空間に打ち上げ曝露を行うというもの。これまで研究目的が多かった曝露サービスの裾野を広げる目的で、記念品などにも対象を広げたのが特徴だ。SpaceBD自身も記念品を打ち上げることとなり、何を打ち上げるか社内で話し合った際に、疫病終息を願うアマビエがいいのではないかという声が出たのだという。

 ISS(国際宇宙ステーション)に向けてビエを象った記念品が打ち上げられることを報じる記事。おそらく最も高い位置まで上がったビエ。

 今更ではあるが、科学的なジャンルでも当たり前のようにビエ=疫病退散のシンボルとして扱われていることに対しては正直かなり疑問がある。それでは疑似科学とかを笑えませんよ。

 

《100》ラグナドール 妖しき皇帝と終焉の夜叉姫

(グラムス 二〇二一・一一・一一)

 

『ラグナドール 妖しき皇帝と終焉の夜叉姫』は2021年10月21日にサービス開始されたアプリゲーム(ソシャゲ)で、日本の妖怪や伝説をモチーフとしている。本作では開始から一月足らずで「アマビエ」が実装されており、定番の妖怪の一つとして扱われていることが分かる。公式Twitterアカウントの紹介文によると「アマビエはどんな疫病もパチンと解決!するんだよ」とのこと。

 ここでのアマビエは少女のような顔立ちの人間に近いデザインになっており、ビエブームの起こりから一年半が経過し、ビエが「デザインを弄っていい」枠に入ったことが窺える。

 

《101》『おかあさんといっしょ』新作人形劇が4月から開始 テーマは「可能性と多様性」

(ORICON NEWS 二〇二二・〇二・一六)

 NHK・Eテレの幼児向け教育番組『おかあさんといっしょ』のぬいぐるみ人形劇が、二〇一六年四月から放送されている「ガラピコぷ~」から「ファンターネ!」に変わることを報じる記事。メインキャラクターの一人「みもも」は「3歳のカッパの女の子」という設定なのだが、色合いといい顔つきといい、妙にアマビエっぽいのでここで紹介しておく。実際にビエがモチーフの一つなのかは不明。    

 

《102》ソロアイドルの上月せれなと小泉花恋、2人組ユニット・SEiRëëN結成

(音楽ナタリー編集部 二〇二二・〇三・〇二)

 それぞれアイドル活動を始めて8年目になる上月と小泉。SEiRëëNというユニット名は、歌で人を魅了するギリシャ神話のモンスター・セイレーンが由来になっている。そのセイレーンと姿が似ていると言われているのが日本古来の妖怪・アマビエで、SEiRëëNは疫病を退散させるがごとく、世の中を明るく照らすために活動していく。

 アイドルユニットの結成を報じる芸能ニュースなのだが、ユニット名がセイレーンなのに文中にいきなりアマビエが登場するので面食らった。「セイレーンと姿が似ている」……?

 

《103》チロルチョコ、昭和・平成・令和の「世代別チロル」発売。各時代に流行ったスイーツを再現    

(グルメWatch 二〇二三・〇四・一〇)

 チロルチョコは、昭和・平成・令和の「世代別チロル」を4月10日に発売する。それぞれの時代に流行したスイーツをチロルチョコで再現した。1袋8個入り(各4個×2種)で、価格は140円前後。(略)令和チロル/2019年~現在の令和時代をイメージした商品。まだ記憶に新しい人気となったマリトッツォと、今なおブームが続いているピスタチオの2種が楽しめる。

 二〇二二年の春以降はほとんど目新しいビエニュースはなく、年中行事に関したグッズのモチーフに取り上げられるくらいだったが、そこに飛び込んできたのがこれ。昭和・平成・令和の三種のパッケージのうち、「令和」をモチーフにしたデザインのものには、ロゴの右横にアマビエが描かれている。

 令和を総括するにはいくら何でも早すぎるとは思うが、令和時代の象徴の一つとしてビエが採用されていることから、ビエが時代の顔となったことがよく分かる。


 以上、ブームのきっかけになったツイートからほぼ三年間を駆け足で振り返ってみた。取りこぼしが多いのは自覚しているが、だとしてもビエが関わった事例の多さとジャンルの広さ、そして二〇二〇年前半の知名度の上昇と社会への定着の速さには驚かされる。

 二〇二一年初頭に記録をまとめた時は、「この後ビエは一過性のブームとして廃れていくのか、あるいは定着するのかは分からないが、それなりに興味深く見守っていきたい」と締めたのだが、それから三年近く経過した今どうなっているのかと問われれば、正直よく分からない(ついでに言えばコロナも収束していない)。

 少なくともビエは「皆さんご存じ」枠の妖怪として定着し、妖怪事典などにはまず載る程度の知名度は得たようだが、果たして五年十年経つとどうなるか、ウイルス性の病気が次に流行った時にまた持ち出されるのかどうなのか。前回と同じ締めで芸がないが、それなりに興味深く見守っていきたい。

いつも隣にビエがいた ―アマビエ出現事例集 二〇二〇~二〇二三―(中編)

(先の記事の続きです)

第三期 Àdjustment(調整、調節、修正)―アマビエは様々な姿にアレンジされ、防疫以外の能力も持つかのように調整されるようになる―

 
《40》「ウマビエ」千厩に誕生 馬産地ちなみ収束祈願
(岩手日報 二〇二〇・〇九・一四)
 アマビエの千厩バージョン誕生―。一関市千厩町の一関商工会議所女性会千厩支部(小菅祐子支部長)が妖怪ウマビエのマスコット作りを始める。馬産地千厩にちなんだ支部のオリジナル作品。

 筆者が勝手に「ハイブリッドビエ」と呼んでいる、他の何かと合体したビエの一例。このあたりまで来るともうアマビエのデザインは当たり前になってきたのか、あるいはアレンジしてはいけないという感覚が薄れてきたのか、デザインを変えたり何かと混ぜたりするケースが増えてくる。

 
《41》「アマビエ」風呂敷配布 各署趣向凝らし 交通安全運動始まる
(毎日新聞 二〇二〇・〇九・二二)
 秋の全国交通安全運動が21日、始まった。(略)船橋市のJR船橋駅前で18日、同市と船橋署の職員などが、疫病を鎮めるとされる妖怪「アマビエ」をあしらった風呂敷300枚を通行人に配布して事故防止などを訴えた。

 風呂敷の写真を見ると、ビエに添えられたフレーズは「無病息災」となっており、しれっと疫病退散を超える力を与えられていることが分かる。

 
《42》ミュークルドリーミー第二二話『スギヤマ☆パラダイス』
(テレビ東京系 二〇二〇・〇九・二七放送)
 新しい『ドリーミーメイト』を探すゆに達は、『悪夢の女王様』から「ゆめちゃん達の近くを探す様に」と言われて中学校に潜入します。一方、中学校では、怪奇現象が多発して、妖怪?のせいではないかと大騒ぎ!
「ミュークルドリーミー」はテレビ東京系列にて毎週日曜日午前十時三十分から放送されたアニメ番組。あらすじの文章を見ただけでは分からないが、このエピソード内で登場人物がアマビエ(にしか見えない何か)の絵を描いて見せるシーンがあり、おそらくTVアニメにビエが出た最初の事例。
 
《43》トイレにおける怪異・妖怪伝承の整理
(日本トイレ研究所 二〇二〇・一〇・〇一)
 日本には様々な怪異・妖怪伝承が存在する。河童や天狗などが代表的なものであるが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、アマビエが注目を集めた。怪異・妖怪伝承の中には、災いや祟りをなす畏怖の対象である怪異・妖怪が存在する一方で、アマビエのように良い影響を与えるものも存在する。

 トイレに関する話題のみを扱うサイトに掲載された、トイレの妖怪についての記事の導入部。「良い妖怪」の代表がアマビエになっている。

 
《44》女の気持ち アマビエさま 香川県丸亀市・寺尾智恵子(主婦・80歳)
(毎日新聞 二〇二〇・一〇・〇一)
 新型コロナウイルスの感染拡大で、手帳にびっしり書いた予定が全て消えた。(略)
そんなある日、台所の隅に洗って重ねたかまぼこ板に目が留まった。新聞に妖怪のアマビエが「厄よけ」「病よけ」につながると書かれていたのを読み、かまぼこ板にアマビエを描いてみた。お姫様ふうや、前向きの姿、ちょっと横向きの姿などを描き、厄よけと健康祈願の言葉を添えて親族や友人たちに送った。(略)自粛生活で思いがけず与えられたゆとりの時間。会えない寂しさが埋められ、かえって親密度が深まった。アマビエさまの御利益大である。玄関に飾ったアマビエさまに「一日も早くコロナが収束しますように」と手を合わせている。

 投書欄より。寺社がビエを採用するケースは春先から多かったが、ここでは「アマビエさま」への信仰が自発し、実際にご利益をもたらした実例が語られている。

 
《45》「アマビエちゃん」も義務化 茨城でコロナ対策条例を可決
(東京新聞 二〇二〇・一〇・〇一)
 茨城県議会は1日、新型コロナウイルス対策として、県民に行動履歴の調査やクラスター(感染者集団)発生地域での広範囲な検査への協力を義務付ける条例案を自民、公明、立憲民主などの賛成多数で可決した。新型コロナ対策で義務規定を設けた条例は全国初とみられる。2日に施行される。罰則規定はない。
飲食店などに登録してもらい、感染者が出た場合に利用者に通知する県独自の対策システム「いばらきアマビエちゃん」についても、事業者の登録や県民の利用を義務化した。県が指導しても応じない事業者名などを公表できる。

 感染者追跡・対策システムは乱立したが、ビエの名前を採用したのは茨城県だけであった。使い方紹介ページの「お店の人はこれでおしまいだビエ!」という台詞のインパクトが強く、ごく一部で流行った。

 
《46》コロナを倒せ!! 薩摩川内・亀山小で運動会
(南日本新聞 二〇二〇・一〇・〇三)
 薩摩川内市の亀山小学校で9月27日、運動会があった。2年生76人は「アマビエに願いをこめて」と題した競技に挑戦。新型コロナウイルスの早期収束を願い汗を流した。
 2人一組で棒の両端を持って走り、「コ」「ロ」「ナ」と書かれた段ボール製のブロックにボールをぶつけて倒す競技。ボールはピンクとブルーの“アマビエ色”で、棒には表裏に「ソーシャルディスタンス」「三みつさけよう」と書いた紙を貼るなど工夫を凝らした。

 色にまで概念化・抽象化されたアマビエをぶつけて物理的にコロナを倒すという、ある意味二〇二〇年を象徴するような記事。競技というよりほとんど呪術である。作家の甲田学人氏がTwitterで「明らかな新造追儺儀式」と評していたのが印象的。

 
《47》くら寿司のハロウィンスイーツは妖怪・モンスター・鬼が集結!? そして“鬼殺隊”たちも
(食品産業新聞社ニュースWEB 二〇二〇・一〇・〇七)
「日本版ハロウィン」(全6種)は、和菓子の練りきりで、味は「こしあん」と「いちごあん」の2種類。こしあんは「ジャック・オ・ランタン」「三つ目小僧」「提灯お化け」をかたどった3種類。いちごあんは「アマビエ」「河童」「からかさお化け」をかたどった3種類。

 ハロウィンにも当然ビエは食い込んでくる。くら寿司はブーム初期からアマビエと甘エビを掛けた商品を出していた寿司チェーン。また、ビエと並ぶ二〇二〇年の妖怪界の話題と言えば「鬼滅の刃」だが、両方にリーチしているお得な記事。

 
《48》「ゲゲゲ忌2020」メインビジュアル公開! 2020年は水木しげる先生イラスト×5期アマビエのコラボが実現!
(「ゲゲゲの鬼太郎」公式サイト 二〇二〇・一〇・一七)
 2019年に引き続き、今年の「ゲゲゲ忌2020」もアニメ描き下ろしビジュアルが実現しました!アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(5期)に登場したアマビエと、水木しげる先生が描いたアマビエがコラボしており、アマビエの絵を人に見せることでの疫病退散の願いが込められたビジュアルとなっております。

 この年の春まで放映していた6期を差し置いて5期が大きく取り上げられている。理由は言わずもがな。

 
《49》疫病退散!妖怪「アマビエ」でコロナ終息祈願ツアー
(株式会社天満屋トラベル公式サイト 二〇二〇・一〇・一七)
 全ての災厄を防ぎ、福を招く神様をお祀りする三津 厳島神社でアマビエ御朱印ゲット! 7,500万年前の地層から湧き出る源泉は筋肉痛や神経津に効果大。西日本最大級の野天風呂に自粛疲れもきっと癒されるはず。

 物議を醸した「GoToトラベル」事業の時期、ビエに関したツアーもいくつか企画されており、これはその一つ。

 この他にも「熊本よかとこアマビエの地「天草で癒される」旅」(ジエイエツチシー株式会社)、「【宮城県内発着】パワースポット!柳津虚空蔵尊「アマビエ様」と2021年放送予定のドラマ舞台登米「明治村」散策」(読売旅行)などのツアーもあった。ビエには史跡も謂れもないので、どこに行って何を見るか、工夫を凝らしているのが窺える。
 
《50》アマビエ、これで「みんなが使える」ように... 商標出願「拒絶」確定へ、立役者となった社長の思い
(J―CASTニュース 二〇二〇・一〇・二三)
 新型コロナウイルスの終息祈願としてイラストなどが流行している妖怪「アマビエ」について、製菓会社「お菓子のさかい」(福島県石川郡石川町)の商標出願が「登録できない」と判断されていたことが分かった。特許庁によると、アマビエをめぐる商標登録の可否判断が示されたのは初めてとみられるという。
 お菓子のさかいの酒井秀樹社長は2020年10月23日、J―CASTニュースの取材に「今回の判断で弊社も、他の製菓会社さんも、今までどおりにアマビエを使えるだろうと思います」と話している。

 商標登録絡みの話題にはこういうものもあった。

 
《51》上天草にアマビエ石像 「SNSで共有して」
(熊本日日新聞 二〇二〇・一一・〇五)
 熊本県上天草市大矢野町の観光物産館「藍のあまくさ村」に、疫病を鎮めるとされる妖怪アマビエの石像(高さ2メートル、重さ2トン)がお目見え。既存の高さ15メートルの天草四郎像と共に記念撮影スポットになっている。

 天草に今度は大きな像が! 「天草四郎生誕の地 あまくさ村」のブログによると、「「世界疫病退散」肥後の国の海に現れたアマビエさん。説によると187センチあったそうです。なのでその大きさで作成しましたよ(^o^)/」とのこと。どこの説によったのか気になる。

 
 

第四期 Broad(広い、広々とした)―年中行事との一体化を果たしたアマビエの活動範囲はいっそう広くなる―

《52》アマビエ鏡餅で「疫病退散」を サトウ食品が新発田で出発式
(新潟日報モア 二〇二〇・一一・〇六)
 サトウ食品(新潟市東区)は6日、新潟県新発田市の工場で正月用鏡餅の出発式を行った。今年は新型コロナウイルス禍の早期収束を願い、疫病退散のいわれがある妖怪「アマビエ」のイラスト付き新商品をトラックに積み、全国に送り出した。

 このあたりまで来ると、もう年中行事なら何でも行けるようになっている。

 
《53》学校田にアマビエ出現 加茂農林高生、稲わら使い2カ月かけ完成
(中日新聞 二〇二〇・一一・一三)
 疫病退散に御利益があるとされる妖怪「アマビエ」が、美濃加茂市の加茂農林高校の学校田に突如、姿を現している。(略)
わらアート作りには紆余(うよ)曲折があった。当初は人気キャラクターの「トトロ」を作る予定だったが、“大人の事情”でやむなく断念。設計図をそのまま生かすため、体形が似たフクロウに方針転換してみたが、今度はあまり似ていなかった。

 先述の通り、ビエがここまで広まった最大の要因は著作権フリーであること(少なくとも、そう思われていること)だと私は考えているのだが、それを裏付けるような記事。トトロはアウトでもビエはセーフなのである。

 二〇二〇年以降のビエは妖怪や予言獣というより「著作権フリーで疫病退散祈願のシンボルでもある、妖怪という設定のゆるキャラ」という位置付けになっているように思える。
 
《54》ミニストップに「アマビエパフェ」誕生。食べて、疫病退散!!
(毎日をオトクにかしこく 東京バーゲンマニア 二〇二〇・一一・二四)
 お菓子の意匠への採用はブーム初期からあったが、全国区のコンビニチェーンが全国的にビエスイーツを仕掛けた事例。
 
《55》アマビエ輝く 大任・道の駅
(読売新聞 二〇二〇・一一・三〇)
 疫病封じの妖怪「アマビエ」をテーマにしたイルミネーションが、大任町の道の駅「おおとう桜街道」にお目見えした。新型コロナウイルス終息の願いが込められており、多くの家族連れやカップルらが訪れている。

 年中行事に一体化したということは、当然年末のイルミネーションにも採用されるわけである。

 
《56》クリスマスにも災厄除けにアマビエさまカードを贈ろう! 素材を無料公開 
(ASCII.jp 二〇二〇・一二・〇一)
 KADOKAWAは12月1日、「クリスマスのアマビエさま」デザインのほか、クリスマスカード全6種類を「賀春.com」にて無料公開した。KADOKAWAの年賀状素材集編集部が夏から続けてきたアマビエさまデザインのグリーティングカード企画。

 年中行事に一体化したということは当然クリスマスカードにも(以下略)。無論年賀状にも採用されており、単に知名度を得ただけでなく、疫病退散を願っていることを示せるシンボルとして定着していることが分かる。

 なお、ここでも「アマビエさま」の呼称が用いられているが、SNSなどで拡散された呼称には「アマビエ先生」というものもあり、これもそこそこ用いられていた。例を挙げると、上記の「ゲゲゲ忌2020」のトークイベントで藤井ゆきよ(犬山まな役)がビエのことを「アマビエ先生」と呼んでいたのを確認している。
 
《57》視点・論点「アマビエブームと『伝承』の価値」
(NHK総合 二〇二〇・一二・〇八) 

 河野まゆ子(JTB総合研究所主席研究員)による十分間の解説番組。ブームの経緯についての説明はともかく、ビエを土地固有の伝承として捉えた上で土地土地の伝承の有用性の話に繋げる結論については納得しがたい部分があった。ビエは共同体内で記憶された妖怪ではなかろうし、特に役に立つ知恵も残してないのではなかろうか。騙されちゃなんねえ。

 なおNHKは、この翌年の大河ドラマ『青天を衝け』第5回(二〇二一・〇三・一四放送)で幕末の江戸で市民がビエを柱に貼って拝むシーンを放映し、その描写が番組解説記事で史実として紹介されたことがあった(『青天を衝け』現在にも響く藤田東湖の言葉 江戸の町には疫病退散として“アマビエ”も Real Sound 二〇二一・〇三・一五)。「当時、疫病退散として家の柱に貼られていたのが、この令和の時代にも再び注目を浴びることとなるアマビエ。もちろんフィクションではない」とのこと。フィクションだと思う。騙されちゃなんねえ。

 
《58》首相動静(12月16日)
(時事ドットコムニュース 二〇二〇・一二・一六)
 午前11時2分から同8分まで、斎藤文夫川崎市観光協会会長らから妖怪「アマビエ」の版画など受け取り。田中和徳前復興相同席。同26分から同31分まで、和泉首相補佐官、国土交通省の藤井直樹国交審議官、上原淳鉄道局長。
ビエ、ついに首相官邸へ!
 
《59》クリスマスストーリーズ「聖夜の人魚と復活の祈り」開催! 
(CARAVAN STORIES公式サイト 二〇二〇・一二・二二)
 今年のクリスマスイベントは新限定ヒーロー「アマビエ」が登場! 本イベントではアマビエの物語クエストをクリアしていくことでストーリーが進行し、物語クエスト第3話クリアにて仲間に加えることができます!  アマビエと一緒にゲリスクで起きた異変を解決しましょう!

 ソシャゲビエの一例。クリスマスのような年中行事はソシャゲのイベントのモチーフの定番だが、そこにビエがくっついている。

 
《60》モノノケ杜の百鬼夜行 疫病退散の噺
(蒼月海里/KADOKAWA 二〇二〇・一二・二四発売)
 二人の少年とモノノケ達のほっこりホラーミステリ!アマビエも登場!?

 表紙にしっかりアマビエが描かれている。小説としてはおそらくこれが最初。なお、筆者もこの年に出した小説の一部でビエブームに言及してはいる。

 
《61》医師奮診、収束渇望… 住友生命が今年の創作四字熟語発表、コロナ関連目立つ
(毎日新聞 二〇二〇・一二・二二)
 住友生命保険は22日、漢字4文字で今年を振り返る「創作四字熟語」の優秀・入選作品計50編を発表した。(略)優秀作品にはコロナ収束を願う「収束渇望(しゅうそくかつぼう)」(就職活動)や、疫病をはらうとされる妖怪「アマビエ」を表した「妖姿願霊(ようしがんれい)」(容姿端麗)などコロナ禍を捉えた作品が目立った。

 もうビエの存在が完全に一般化し、もじって使われるようになっていることが分かる。

 
《62》門松ってなに? 年神様への目印 縁起物てんこ盛りの飾り
(丹波新聞 二〇二〇・一二・二三)
 世は新型コロナ禍中。アマビエと同様、今こそ邪気を払い、生命を与えてくれる年神様を呼ぶための「縁起物」を生活に取り入れてみては?

 疫病のみならず邪気を払うものの代表としてビエが扱われている。他に何かあっただろうと思う。

 
《63》\疫病退散/コロナ禍の一刻も早い終息に願いを込めて、ブルボンオンラインショップから「アマビコアマビエ祈念クッキー缶」が新発売‼ #アマビコ と #アマビエ がプリントされたクッキーが1缶に2枚ずつ入っているよ 年末年始の贈り物に
(BOURBON(ブルボン)公式Twitterアカウント 二〇二〇・一二・二六)

 ビエは年末年始の贈答品にも! ビエのみならずアマビコも入っている。美味しかった。

 
《64》「あまひよ」が見守る滋賀のまち 長浜署が自前キャラでイルミ 詐欺撲滅など祈願
(毎日新聞 二〇二〇・一二・二七)
「あまひよ」は署のマスコットキャラクター「ひよたん」と、疫病を鎮める妖怪として注目されている「アマビエ」を合体させたキャラクター。

 アマビエと別のものを合わせたオリジナルキャラ、いわゆる「ハイブリッドビエ」の一例。

 
《65》「クタベ」「アマビエ」神社で疫病退散 祭中止でお蔵入り一転出番
(北日本新聞 二〇二〇・一二・二九)
 新型コロナウイルス感染の収束が見通せない中、射水市串田(大門)の櫛田神社は、初詣客に疫病退散を願ってもらおうと、今年中止になった高岡市の中田かかし祭で展示される予定だった妖怪「アマビエ」と霊獣「クタベ」のかかしを境内に飾る。

 この年にはビエをきっかけにして他の予言獣にも注目が集まったが、そのことを示す記事。なお、このクタベのかかしは、実在の史料に描かれた黒くシンプルな姿ではなく、三つ目で脇腹にも三つの目がある獅子という「白澤」のような姿だが、これは水木しげるが描いたクタベを参考にしたためと思われる。

 
《66》コロナ退散祈願!「アマエビ」たっぷり恵方巻が新登場 『アマビエさん巻』 1月4日(月)から全国のくら寿司にて予約受付開始 定番の『まるごといわし巻』をはじめ、計7種類が登場!
(くら寿司公式サイト 二〇二一・〇一・〇四)

 年中行事に一体化したということは当然節分の恵方巻(以下略)。伝統のありそうなジャンルならどこでもビエが顔を出していることが分かってもらえると思う。

 
《67》アマビエ像のさい銭、病院に制作者ら寄付 医療従事者の苦労を思い 茂原 /千葉
(毎日新聞 二〇二一・〇一・〇五)
 アマビエは江戸時代に疫病を予言したとされる妖怪で、コロナから守るキャラクターとしてもてはやされている。チェーンソーで木彫作品を作る茂原市の有志のグループが昨春、道路沿いや商業施設「アスモ」などに像を建てた。存在が知られると、像の足元に小銭が置かれるようになり、さい銭入れを置いたという。

 商業施設に置かれたビエの像に自然と賽銭が集まったというニュース。信仰が自然発生した例。

 
《68》1都3県の客「お断り」 市が飲食店用の張り紙作成 静岡・御殿場
(毎日新聞 二〇二一・〇一・〇九)
 緊急事態宣言の対象となった神奈川県と隣接する御殿場市は7日、4都県在住者と市民に対して、往来の「最大限の自粛」を求める若林洋平市長のコメントを発表。市内飲食店向けに主に4都県からの客の入店を控えるよう求める「一見(いちげん)さんお断り」と記した張り紙を作成した。「店主・御殿場市」の表記があり、市のウェブサイトからダウンロードできる。張り出すかどうかは店の判断に委ねられる。

 記事の文中にはないが、市が作成したポスターにはアマビエが頭を下げている姿が描かれている。疫病退散のシンボルだったはずのビエが防疫を名目とした排除に手を貸しかけた一例。

 なお、ポスターのビエには一切のキャプションはなく、「我々はコロナの収束を願っており、あくまで感染症対策のために『一見さん』の入店を禁止するものであるので、理解せよ」というメッセージを言外に匂わせているように思われる。狡猾。
 
《69》「あまびえさま ころななくして」香川県の園児 所縁の天草市に手紙
(西日本新聞 二〇二一・〇一・一〇)
「あまびえさま ころななくして」。江戸時代に熊本の海に現れたとされる疫病を払う妖怪「アマビエ」宛ての手紙が、熊本県天草市役所に届いた。送り主は、香川県坂出市の松山保育園の園児18人。園によると、感染「第1波」で登園自粛になった経験から、手紙を書くことに。送り先を探すうちに、アマビエの石像をまつる天草市の大島子諏訪神社を市ホームページで知ったという。
《70》妖怪アマビエから園児たちにお手紙? 「新型コロナをなくしてください」の思い届く 香川・坂出市
(KSB 二〇二一・〇一・二一)
 20日、香川県坂出市の保育園に熊本の神社から手紙が届きました。新型コロナの終息を願う園児たちへの「お返事」の手紙です。
先生「誰からだろう」
園児「えっ、もしかしてあれのやつ?」
「園児たちのもとに届いたのは、疫病をしずめるといわれる妖怪アマビエからの手紙です」
 坂出市の松山保育園に手紙が届いたのは、登園の自粛や行事の規模の縮小などでつらい思いをした園児たちが、新型コロナの終息を願う気持ちを手紙にしたことがきっかけでした。
 2020年6月、園児たちは熊本県天草市の大島子諏訪神社が「アマビエの石像」を祭っていることを知り、「コロナを早くなくしてください」など、思いを書いて天草市役所に送りました。
 受け取った市が神社に相談し、宮司がアマビエの代理として返事を書いて神殿に奉納。20日、園児のもとに届きました。(略)
「新型コロナをなくしてくださいって書いたから、頑張りますって返事が来た」
「写真とか宝物にしたい」
「(Q.お返事もらってどう?)うれしい!」
「174歳だって、アマビエさん」
 また、返事を書いた宮司の思いを園児たちに聞いてもらうと…
大島子諏訪神社/山浦一男 宮司「コロナが終息して、何年か先に(松山保育園の)ライオン組の皆さんがアマビエ像の石神様に会いに来てくれることを願っています」
(園児は―)
「(Q.みんな遊びに行く?)行く!絶対行く!」
「(アマビエに会ったら)お手紙ありがとうございましたって言う」

 先に石像を建てた天草がビエの住所として選定され、そこの神社の宮司がビエを代弁して手紙を書いたというニュース。先の身長の件と言い今回の年齢(174歳)と言い、天草市はビエの設定を盛りがち。園児たちはその後アマビエに会いに行ったのだろうか。

 
《71》防波堤に出現した白いモンスター…これは疫病退散の前触れ? 北海道興部町
(HBCニュース 二〇二一・〇一・二三)
 オホーツクの興部町の漁港に、「あの妖怪」が出現したと話題になっています。「あそこに、沖防波堤にある灯台が凍って、できたものなんですけど、アマビエに似てるという」

 凍った灯台の写真を見る限り、水木しげるの描くモジャモジャした妖怪(水虎やマンモス男や大海獣など)には似ているが、あまりアマビエぽくはない。毛が長くて直立していればアマビエ認定されるらしい。

 
《72》新型コロナ終息祈願 豪雨で流されたアマビエ 熊本
(TKUテレビ熊本 二〇二一・〇一・二九)
 宇城市にある戸馳島では去年7月の豪雨で流されてきたアマビエ像が飾られ、地域の人たちが豪雨からの復興とコロナの終息を祈願しています。

 豪雨の折に流れ着いたアマビエ像を祀って祈りを捧げている島があるという、ちょっと伝奇めいたニュース。防疫に加えて豪雨からの復興まで祈願されており、また能力が増えているが、豪雨災害で海に流されたものが漂着したという由来を考えると納得感はある。

 
《73》アマビエのおひな様
(時事ドットコム 二〇二一・〇二・〇六)
 静岡県袋井市の禅寺「可睡斎」のひな祭りにお目見えした「アマビエびな」。「アマビエ」は疫病退散に御利益があるとされる妖怪。浜松市から訪れた姉妹は「アマビエで早くコロナがよくなって欲しい」

 ビエブームからそろそろ一年が経つ頃に出てきたもの。もう「コロナをどうにかするもの」として完全に定着している。

 
《74》アマビエ・アマビコ双面像 疫病退散願い手彫り 足利の山口さん、徳正寺に奉納
(毎日新聞 二〇二一・〇二・一一)
 震災被災地などに手彫りの仏像を贈るボランティアを続けている足利市松田町の元そば店主、山口千二さん(81)が、正面に「アマビエ」、裏面に「アマビコ」を彫った木像を作り、新春行事「繭玉市」で知られる市内の古刹(こさつ)・徳正寺に納めた。(略)
 山口さんは昨年7月から仏像の代わりにアマビエ風の木像を作り始め、県内外の寺などに奉納。史跡足利学校で同じ由来のアマビコを紹介した展示があったことなどから、昨年9月にアマビエ、アマビコの双面像に取りかかったという。

 両面宿儺のような二面予言獣! 普通のビエはもう当たり前になってしまったので、ということが分かる。初期の頃は控えられていたビエのアレンジがいつの間にかすっかり一般化していることも分かる。

 
《75》【Goto商店街企画】ハピリンモール★アマビエ祈願祭~コロナ終息を願って~
(ハピリン公式ホームページ 福井駅西口再開発ビル 二〇二一・〇二・一四開催予定)
【POINT1】御祈願ブース(アマビエ着ぐるみ・アマビエ巫女予定)(無料)/ハピテラスにアマビエ神社を建立しコロナ終息を願った絵馬を奉納する/イベント期間中お買い上げされたお客様にアマビエ絵馬を進呈イベント終了後は柴田神社に奉納しご祈祷依頼

 福井のショッピングモールで開催予定だったイベントの告知。残念ながらコロナ感染拡大に伴い中止されてしまったので、来場予定だった「アマビエ巫女」がいかなる存在だったのかは不明のままである。

 
《76》キティちゃんとのコラボも 「アマビエグッズを所有」最も多いのは20代男性
(Sirabee 二〇二一・〇二・一六)

 様々なテーマの調査結果を報じるサイト「しらべぇ」に掲載された記事。若い男性のビエグッズ所有率が最も高いという結果は個人的には意外だった。

「新型コロナの流行で注目されたけれど、それほどかわいい妖怪ではない。描く人のセンスにもよるけれど、グッズがほしいとまで思えるものはなかった」(20代・女性)、「キティちゃんがアマビエになっているグッズが発売されたときは、かわいいなと思った。ただ実際に購入するまでにはならなかったので、手元にアマビエグッズはない」(20代・女性)といった辛辣な意見も紹介されている。
 
《77》接触確認アプリ「COCOA」、通知不具合修正も1日1回のアプリ再起動が必要
(PC Watch 二〇二一・〇二・一九)
 陽性者との接触通知を正確に受け取るためには、定期的にアプリを再起動する必要があるとしており、注記にて「※速やかに通知を受け取るためには1日に1回程度」の再起動が推奨されている。アプリを立ち上げ、アマビエのイラストと「STOP感染拡大」の文字の画面が表示されれば再起動となっているようだ。

 国が導入した接触感染アプリの不具合についての続報の中にもビエの名が説明なしで出てくる。この年を象徴するようなニュース。

 
《78》「あまびえさん」プレゼントキャンペーン
(遊戯王OCGデュエルモンスターズ公式サイト 二〇二一・〇二・二〇開催)
 2021年1月16日(土)→ 2021年2月20日(土)より全国のフレンドリーショップにて、「疫病退散」の願いを込めて、OCG関連商品をご購入された方にOCGカード「あまびえさん」を配布いたします!

 老舗のカードゲーム「遊戯王OCGデュエルモンスターズ」でビエがカード化され、無料配布されたというニュース。緊急事態宣言を受けて配布が一回延期されたり、「あくまで祈りを込めたものなので」という理由でカード店が買取を断ったりという周辺の事情も含めて印象的な一件。

 

《79》園児が描いたアマビエ、コミュニティーバスに 茨城・土浦
(毎日新聞 二〇二一・〇二・二二)
 茨城県土浦市のコミュニティーバス「キララちゃんバス」の車体に、市内の園児が描いた妖怪「アマビエ」の絵がラッピングされ、JR土浦駅前で21日、記念撮影会が開かれた。アマビエは疫病を鎮めるとされる妖怪で(以下略)

 ビエブームからそろそろ一年が経つ頃に出てきたもの。もう「コロナをどうにかするもの」として完全に定着しているのがよーく分かる(二回目)。

 
《80》津 卒業式舞台にアマビエの絵 桃園小6年生が共同制作 三重
(伊勢新聞 二〇二一・〇三・一三)
 これまでは桜の木を描くことが多かったが、今年は実行委員で話し合い昨秋の運動会で作った応援旗に描いた疫病退散の象徴とされる妖怪「アマビエ」を再び題材に選んだ。
 節目の学校行事にもビエはしっかり現れる。この世代にはビエは学生時代の思い出とセットで記憶されていくのであろうなあ……と思ったことを覚えている。

 

(次の記事に続きます)

いつも隣にビエがいた ―アマビエ出現事例集 二〇二〇~二〇二三―(前編)

 本稿は、二〇二四年一月に発行した同人誌「いつも隣にビエがいた」に収録した原稿を再録したものです。コロナ禍とアマビエブームという時事ネタを扱った同人誌なので、もう増刷することはないでしょうし、軽く修正を加えた上でブログで公開することにしました。いつかどこかで誰かが何かの参考にでもしてくれれば幸いです。
 なお、この原稿はそもそも二〇二一年五月に西日本化物・妖怪同好会より発行された同人誌『怪魅型(かみがた)』第参号に「アマビエに騙されちゃなんねえおじさんas 峰守ひろかず」の筆名で寄稿した『いつも隣にビエがいた アマビエ出現事例集 二〇二〇・〇二~二〇二一・〇三』がベースとなっています。
 また、文中のネット上の情報はいずれも2023年12月3日に検索・閲覧したもので、元々紙媒体用の原稿であるため文中にリンクなどは張っておりません。ご了承ください。
 
(以下、本文)
 コロナ禍に見舞われた二〇二〇年の日本で巻き起こったアマビエーム。その経緯や概要の解説、専門家による考察を読みたいのであれば、専門家による優れた論考が既に多数発表されており、一応私も『予言獣大図鑑』(文学通信)という本でそれらしいことを書いていたりもするので、気になる方はそちらを参照していただきたい。
 本稿の目的は、二〇二〇年二月以降の日本で実際にアマビエがどのように扱われてきたか、ただひたすら具体例を列挙することにある。
 対象時期はひとまず二〇二三年四月までとし、アマビエの扱われ方などを参考に「Awake」「Magnify」「Àdjustment」「Broad」「Inconsistent」「Establish」の六期に区分している。なぜこの六つの単語なのかと言えば、頭文字を並べると「AMABIE」になるからである。
 紹介する事例は主にメディアやネットニュースに取り上げられたものとし、時系列順に並べた上で、個人的な観点や記憶に基づくコメントを付した。全ての事例を紹介することは絶対に不可能なので、取り上げる事例についてはなるべく広い分野をカバーできるように努めた。こんな風に使われていたなあ、こんなのもあったのか、などと思っていただければ幸いである。
 なお、この文章内ではアマビエのことを「ビエ」と呼称する。しないこともある。
 

第一期 Awake(目覚める、覚醒する)―アマビエは目覚め、活動を始める―

《1》とんでもない勢いで某ウイルスが流行ってますが妖怪の中に「流行り病がでたら対策のためにわたしの姿を描いて人々にみせるように」と言ったのがいるんですよ。アマビエって言うんですけど。
(大蛇堂(妖怪掛軸作家)公式Twitterアカウント 二〇二〇・〇二・二七)
 ブームのきっかけとされるツイート。なお、短文投稿SNSである「Twitter」は、後に「X」と改名されており、「ツイート」も「ポスト」へと名称を変えられたが、本稿では当時の呼称を使用する。
 
《2》ホタルコーポレーション、アマビエ3Dプリントフィギュア配布
(印刷業界ニュース Pj web news 二〇二〇・〇三・一一)
フルカラー3Dインクジェットプリントの(株)ホタルコーポレーション(大阪市住之江、福永進社長)は、コロナウィルス終息を祈願して3月13日までの期間限定でウルトラモデラーズの加茂恵美子氏モデリングの「アマビエ」のフルカラー3Dプリントフィギュア(海デザインのクリア台座付き)を無料配布(略)。
 この後ビエは数限りなく立体化されるが、おそらく最初期の立体化の事例。オリジナルの瓦版のデザインを忠実に再現した造形は、今になって思えば逆にレア。
 
《3》「神楽大戦・陽之巻」,期間限定“アマビエ様”イベントが開催中
(4Gamer.net 二〇二〇・〇三・二〇)
PC・スマホ向けブラウザゲーム『神楽大戦・陽之巻』において、期間限定イベントを3月20日(金)より開催致しました。/■殺伐とした世にアマビエ様が!
 いわゆるソーシャルゲーム(ソシャゲ)にアマビエが登場するイベントの告知記事。キャラクターやエピソードを随時追加できるソシャゲはタイムリーな要素を持ちこみやすいので、ビエが使われる事例は多かったが、その中でも最初期の事例。
 
《4》アマビエはダイヤモンド・プリンセス号だ! メディアが拡散した現代の予言獣/吉田悠軌・オカルト探偵
(ムーPLUS 二〇二〇・〇三・二一)
悪疫を予言した獣として話題の「アマビエ」について、オカルト探偵・吉田悠軌が調査に乗り出した。その由来と、出現の意味に迫るなかで、驚きの「現代アマビエ」を指摘する――。驚天動地! 我々は、すでにアマビエを目の当たりにしていたのである。

 オカルト雑誌「ムー」のWEB媒体で吉田悠軌氏が執筆したもので、コロナ禍初期に感染症が発生した場所として知られた客船ダイヤモンド・プリンセス号とアマビエを関連付けて紹介している。

 その内容は「まず結論から言おう。アマビエとは、ダイヤモンド・プリンセス号だったのである」「根拠は、その見た目だ。ダイヤモンド・プリンセス号の船首をよくご覧いただきたい。どこをどう見ても、これはもうアマビエの顔にしか見えないではないか」という強引なもので、感染症が拡大・長期化するにつれ、このように露骨に茶化す記事は見られなくなった。コロナ禍初期の風潮を示す事例としては貴重な一件。

 
《5》知らないうちに、拡めちゃうから。
(厚生労働省公式サイト 二〇二〇・〇四・〇九)
疫病から人々を守るとされる妖怪「アマビエ」をモチーフに、啓発アイコンを作成しました。(こちらにある素材をご家庭や学校、職場でお使いいただけます。)

 厚労省がまさかの採用! この時点でもう既に広く知られてはいたが(だからこその採用だったのだろうが)、国が採用したことである種のお墨付きが与えられ、公共団体や商業での利用にブーストが掛かったように思われる。なお、オリジナルでは左向きだったデザインが国に採用された時点で右向きになっており、この事実からはなんらかの政治的寓意を読み取れなくもないと思う。
 
《6》【キャラ紹介】[疫病退散]アマビエ/江戸時代、肥後国(熊本県)に現れたと伝えられる、光り輝く半人半魚の妖怪。豊作や疫病などの予言をし、アマビエの姿絵による除災を告げた。この話は当時ニュースとして取り上げられ、実際にアマビエの姿の描かれた瓦版が存在する。/#あやかし百鬼夜行/#あや魂
(「あやかし百鬼夜行 魂」公式Twitterアカウント 二〇二〇・〇四・一〇)

 ソシャゲビエの一例。こっちもなかなか早い。

 このゲームのキャラクターは基本的に人間型なのだが、このアマビエは、二頭身で三本足、薄紫の長い髪、短い嘴、全身を覆う水色・黄緑・ピンクの三色の鱗という、当時のオーソドックスなアマビエの姿をしており、全く擬人化されていない。

 この「擬人化ゲームなのにビエはそのままのスタイル」という状況は本作以外でも見られたが、おそらくこれは「アマビエは神仏に近いものであり、真剣な祈願の対象なのであまり弄ってはいけない」というバランス感覚が作用した結果かと思われる。
 なお、このバランス感覚は時間経過とともに薄れていき、数か月後にはアレンジされたり別のものと混ぜられたりしたビエがどんどん出てくるようになる。信仰の衰退が早い。
 ちなみに「あやかし百鬼夜行」は妙にマニアックな妖怪を取り上げることで一部で知られるゲームで、コロナ禍に先立つこと数年前の二〇一八年九月にはビエと同じく予言獣である「尼彦入道」を、アマビエ実装から一年半ほど後の二〇二一年一二月には「ヨゲンノトリ」を登場させている。
 
《7》しづかのアマビエのお札
(市東真一/長野県民俗の会通信 二〇二〇・〇五・〇一)

 長いので要約すると「筆者(市東)がアマビエのお札を三月下旬に制作・配布し、御嶽教松本教会で簡単な入魂式を行って札を置いていったところ、教会長が『木曽御嶽山で祀られている少彦名命である』と認識して拝んでいた」という報告。

 ビエを祀ったり拝んだりする事例はこの後も頻出するが、既存の神に同定するケースはあまり多くなかった。

 
《8》新型コロナ終息願い「アマビエ」に 山都町・清和文楽館の「雪おんな」人形
(熊本日日新聞 二〇二〇・〇五・〇五)
熊本県山都町の清和文楽館が、演目「雪おんな」の人形を、疫病を鎮めるとの言い伝えがある熊本ゆかりの妖怪アマビエに変身させた。

 妖怪や伝統芸能との習合の先駆けのような事例。よく分からないものに変身させられた雪女は怒っていいと思う。ここにある「疫病を鎮めるとの言い伝えがある」という断定を避けた言い回しはこの年何度も見ることになった。

 なお、人形浄瑠璃とビエの関係はこの後も展開していき、翌年三月には、熊本市の県立劇場で新作人形浄瑠璃「肥後アマビエ戀歌(こいうた)異聞」が上演されることとなる。

 
《9》【すごい】巨大アマビエが校庭に!コロナ退散へ絵描き歌 鹿児島市
(ライブドアニュース 二〇二〇・〇五・〇五)
アマビエの着ぐるみが歌詞通りに白線を引き、縦35メートル横25メートルの絵が完成。児童には絵のお守りが贈られる。

 アマビエの着ぐるみが鹿児島のご当地ヒーロー「薩摩剣士隼人」と一緒にアマビエの絵を描いたというもの。ビエの着ぐるみはおそらくこれが最初だが、この後もそんなに増えてはいない様子。

 
《10》表紙を飾るは、佐藤真生が描く”アマビエさま”!『Discover Japan』 2020年6月号「緊急特集 おうち時間。」発売
(music.jpニュース 二〇二〇・〇五・〇七)
 前号の予告では、今号は「キャンプ」を特集するはずでした。ですが、短期間のうちに世の中は大きく変わり、キャンプ特集の制作・発売を、やむなく見送る決断を致しました。(略)表紙を飾っているのは、佐藤真生筆『アマビエさま』。アマビエとは、江戸時代、熊本の海に現れ「疫病が流行ったらわたしの写し絵を早々に人々に見せよ」と言って海中に姿を消した妖怪(神!?)。

 出版物の中では最初期のビエ表紙雑誌。記事の中でビエとは何かを説明しているあたりがいかにもブームの初期っぽい。一部のSNSで見られた「アマビエさま」という呼称が用いられているのも注目。

 
《11》大島子諏訪神社に"アマビエ”の石神さま
(天草市公式サイト 二〇二〇・〇五・〇七)
5月11日、有明町の大島子諏訪神社にアマビエの形の石神さまが鎮座しました。(略)宮司の山浦一男さんが、新型コロナウイルスの影響で地域の子どもたちが学校に行けないようすを見て「なんとかしたい」と思い、下浦町の黒川保石材店に依頼して制作したもの。

 ビエの出現地とされる熊本が動いた事例。天草にはこの後にもビエの石像が経つのだが(これは伏線)、そちらが観光目的なのに対し、この時点では地元の人々の祈りの対象であるあたりが対照的か。

 
《12》「アマビエは犯罪も封じます」 パトロールカードで詐欺手口紹介 兵庫・篠山署
(毎日新聞 二〇二〇・〇五・一四)
兵庫県篠山署地域課の警察官が今話題の「アマビエ」を取り上げた「アマビエパトロールカード」(A5判)を考案。

 「犯罪も封じます」という文章からは「疫病を封じるのはもう皆さんご存知のことと思いますが」という意図がよく見える。五月半ばの時点でビエは疫病退散にご利益のある妖怪として周知されていたことを示す好例。

 
《13》漫画家やクリエイターによる、話題のアマビエ作品を収録した書籍を緊急出版! 『みんなのアマビエ』5月19日発売
(PRTIMES 二〇二〇・〇五・一九)

 扶桑社がビエをテーマにした作品集を刊行したというニュース。ビエ商品は多かれど、出版関係ではあまり続かなかった様子。思ったほど売れなかったのだろうか。

 
《14》【新SS情報】本日メンテナンス後から開催の選抜ガチャで登場する、新SS「アマビエ」をご紹介!巷で噂の妖怪アマビエ様がドラポにも登場じゃ。気品のあふれる姿じゃが、高貴な妖怪なんじゃろうな。進化分岐は神々しくてまさしく神そのものにも見えるのう。なんにせよ、皆にもご利益あるといいのう。
(ドラゴンポーカー(ドラポ)公式Twitterアカウント 二〇二〇・〇五・二二)

 ソシャゲに登場したビエの一例。「高貴な妖怪なんじゃろう」「神々しくてまさしく神そのものにも見える」「皆にもご利益あるといいのう」といった紹介文の書き方からは、アマビエを「神そのものではないが、それに近しい存在」と見なす姿勢が窺える。この扱われ方はコロナ禍以降のビエの特徴の一つであり、おそらくネタ元は水木しげるによる妖怪事典の紹介文。

 
《15》「妖怪アマビエ」テーマの新作能  兵庫・丹波市の能楽師が創作
(ラジオ関西トピックス ラジトピ 二〇二〇・〇五・二九)
 とある大臣の夢に「疫病を鎮めるための方法を授けよう」と海彦が突然現れ、「自分の姿を写して世に広めたら収まる」……と言い残した。大臣はお告げの通りにすると疫病が収まった。これに感謝するために人々が海辺で音楽を奉納していると、実際に海彦が現れ、舞をまって、「これからも守っていくので力をあわせて乗り越えていくように」という言葉を残し海にかえって行った、というものだ。
 上田さんは「疫病退散、無病長寿を願うのであれば、妖怪ではなく神様から遣わされたという形にした。海彦(アマビエ)を妖怪ではなく、神聖なもの、海神(わだつみ)からのお使いと考えた」と話す。

 伝統芸能がビエを取り入れたケースの一つ。瓦版の記述を踏まえつつオリジナル要素が足されている。ビエは「これからも守っていくので力をあわせて乗り越えていくように」とか言う妖怪じゃないと思っていたのだが、ちょっと見ない間に偉くなったもんだビエ。

 
《16》妖怪横丁のゆかいな妖怪達が「妖怪アクリルキーホルダー」になって登場! 人気の妖怪をラインナップ★
◼︎ゲゲゲの鬼太郎◼︎ネコ娘◼︎ねずみ男◼︎アマビエ◼︎カワウソ
妖気がUPしちゃうかも?!
(株式会社ブルジュラ公式Twitterアカウント 二〇二〇・〇六・〇八)

 「ゲゲゲの鬼太郎」の新商品の告知だが、この年の三月に最終回を迎えた第6期ではなく、二〇〇九年に終了したその第5期のグッズ。なぜ5期かと言えば、5期にはアマビエがレギュラーキャラクターとして登場していたからだと思われる。五期の鬼太郎はビエをブーム前に登場させていた唯一のアニメだった。

 
《17》アマビエ足そう
(福岡市政だよりWEB版 二〇二〇・〇六・〇九)
これまでの非常持出品に加え,マスクや体温計などを準備しておきましょう。「アマビエ足そう」で覚えてください(妖怪「アマビエ」が動画でご紹介しています)。
「アルコール消毒液」「マスク」「ビニール手袋」「衛生用品」「体温計」「ソープ」「上履き」の七つ(頭文字を並べると「あまびえたそう」)という非常持出品のチェックを促すための標語にビエが採用。厚労省によるお墨付きを経て公的機関がビエを採用し始めたケースの一つ。
 
《18》遂に民間信仰の魔の手が伸びて来た
(七尾七衛(@7o_7e)Twitterアカウント 二〇二〇・〇六・一〇)

 Twitterユーザー「七尾七衛」氏が投稿したどこかのスーパーの肉売り場に掲示された手書きのポスターの写真。アマビエの周囲に「おうちでごはんだよ」「疫除祈願」「アマビエ様、コロナから守って下さい!!」というフレーズが記され、アマビエの腹の上には「今日はポークソテー!! ブタ食べてもビタミンとれるの」と商品をアピールする文面がある。同アカウントによると、この「今日は~」の部分は日によって「今日は、しょうが焼きどうかしら?」や「今日はやきにくいかがかしら?」などに差し替えられていたとのこと。

 なお、本稿は基本的に大手企業の商品やマスコミによる報道のみを対象としており、市井の一点ものは対象外なのだが、この「今日はポークソテー」のビエは印象に残っていたためにここで取り上げた。
 このようなお手製かつ一点もののビエは、当時、おそらく日本中に現れていたと思われる。これを読んでいる人も(無論私も)、市民病院で、図書館で、公共交通機関で、学校で、誰かが描いたり作ったりした一点物のビエを見たはずで、このブームはそういった活動で支えられてきたものだろう。
 
《19》【学内研究費支援】アマビエ研究推進事業を行います。新型コロナウイルス感染症に関する課題について研究費支援 (応募期限)令和2年6月26日(金)正午  詳細は以下URLをご参照下さい。
(熊本大学URA推進室公式Twitterアカウント 二〇二〇・〇六・一一)

 感染症に係る研究推進事業の名称への採用。熊本はご当地だけあってこういった使い方が多かった気がする。

 
 

第二期 Magnify(拡大する、大きくなる) ―アマビエは広く知られるようになり、ネットの外へと活動範囲を広げていく―

《20》「MANGA Day to Day」始まる!総勢100名を超える豪華作家陣によるリレー連載企画がスタート!!
(アル マンガファンの愛で作るマンガサイト 二〇二〇・〇六・一五)
「MANGA Day to Day」とは、新型コロナウイルスによる混乱と不安が世界中を覆う中で、そんなウイルスの影響下にある日々を舞台にした短編マンガをリレー形式で連載していくプロジェクトです。

 複数の漫画家による掌編描き下ろし企画。初回のちばてつやがアマビエを描いており、ビエを扱った作家は他にもいた。

 
《21》海なし県にもアマビエ 茂林寺 タヌキ扮したイラスト SNSで話題
(上毛新聞 二〇二〇・〇六・二九)
疫病を鎮めるとされる人魚に似た妖怪「アマビエ」に扮したタヌキのイラストや「群馬県に海はねぇ」の文字が描かれている。インターネット上では「海なし県なのでアマビエが来られない」などと書き込まれ、反響がある。同寺の古川正道住職(55)は「群馬に海はないけど茂林寺沼などの沼がある。(アマビエが)来ないことはないでしょう」と笑う。

 分福茶釜伝説で知られる茂林寺に現れたもの。「アマビエは海がないところには来ない」という設定がいつの間にか出来上がっている。そうなんだ。

 
《22》超絶かわいいアマビエが仲間になる『放置系ハクスラモンスターズ』配信開始
(電撃オンライン 二〇二〇・〇六・三〇)
本作は、戦略性の高いダンジョン攻略とモンスターの収集&合成を同時に楽しめるRPG。(中略)現在はストーリー第2章まで公開されており、その後も順次公開予定とのこと。謎の妖怪アマビエをはじめ、さまざまなキャラクターとの物語が楽しめます。

 ソシャゲビエの一例だが、ビエが追加キャラではなくリリース開始時点で実装されているあたりが新しい。

 
《23》アマビエが「コロナ撃退」 新作えびす舞披露 西宮
(神戸新聞 二〇二〇・〇七・〇二)
えべっさんの総本社、西宮神社(兵庫県西宮市社家町)の地元にいたと伝わる人形遣い「傀儡師(くぐつし)」が演じる「えびすかき」を復活させた「人形芝居えびす座」は1日、同市の西宮中央商店街で、コロナ禍の終息を願い、疫病よけの妖怪「アマビエ」が登場する新作のえびす舞を披露した。(略)新作「アマビエの段」では、えびすさまがアマビエに化身し、新型コロナウイルスを蹴り飛ばすなどして撃退。

 伝統芸能系ビエの一例。此処に登場するビエはあくまで恵比寿が一時的に姿を変えたものという設定。後年の伝統芸能系のジャンルではビエが堂々とビエとして登場してくることを思うと、ブーム初期の手探り感が窺える。

 
《24》『疫病退散!アマビエール』第1話「アマビエール誕生!」  
(YouTubeビートファイターAceチャンネル 二〇二〇・〇七・〇四)
伝説の巫女の子孫を探しに秋田までやって来たアマビエの孫『アマピエ』と運命のJKが出会うとき、病魔を祓(はら)うスーパーヒロイン『アマビエール』が誕生する! 効果付きスライドショーで展開するアマビエール最初のエピソードです。

 「疫病退散!アマビエール」は秋田県のアマビエモチーフのご当地ヒーロー(ヒロイン)。二〇二〇年五月四日には「アマビエちゃん(仮名称)」で活動を開始しており、七月になってから「アマビエ―ル」の名が付いた。かわいい。その後も活動を続けている。

 
《25》電通、「アマビエ」商標出願→取り下げ ネットでは物議、広報「活用を再検討」
(J-castニュース 二〇二〇・〇七・〇六)
 広告代理店大手の電通が「アマビエ」の文字商標の出願を取り下げたことが2020年7月6日、分かった。同社広報がJ-castニュースの取材に明かした。取り下げ手続きをしたのは同日付という。
 アマビエは疫病退散祈願の妖怪として、新型コロナウイルスの蔓延以降、各所でモチーフとして活用されている。その中で電通が商標出願していたことに、インターネット上では「名称を独占しようとしてる」「理解できるけど...」などと賛否の声があがっていた。

 この件に関しては、商標登録されたらビエを自由に使えなくなるのではないかという危惧がSNSで散見された。この「自由に使える」という要素こそがビエの人気の根拠だったと筆者は思っている。

 
《26》初出品。疫病退散の願いをこめて18金製「アマビエ」登場 松坂屋上野店「金の祭典」
(PRTIMES 二〇二〇・〇七・〇七)

 比較的安価なものが多かったビエグッズだが高価なものも存在し、これはその最高ランクで、十八金製のアマビエは三三〇万円。売約済みになっていたとか。

 
《27》ウナギ焼くのはアマビエ?いいえ、ウナビエ 店主が話題
(朝日新聞 二〇二〇・〇七・一九)
香ばしい煙の先に、アマビエ?――。茨城県笠間市のウナギ屋に、風変わりな化粧顔でウナギを焼く男性の姿がある。名付けて「ウナビエ」。(略)この春はコロナ禍で売り上げが6割ほど落ち込んだ。「世の中全体が暗いからこそ、店を明るくできないか」。ひらめいたのが、疫病よけの伝説がある妖怪として注目を集めたアマビエを模した化粧だった。くま取りを応用し、ウナギを意識して青色も採り入れた。新たに始めた宅配にも、そのまま出かけていく。

 ビエを使っての客寄せは多かったが、ビエに仮装し、しかもビエの特徴としてデザインではなく色味(化粧)を採用したという変わった事例。そもそも瓦版に色は付いていないわけで、アマビエの色には主に水木しげる画および「ゲゲゲの鬼太郎」五期のアマビエのカラーリングが使われていたのだが、その色合いだけでもビエを示すものになっていた。

 
《28》毒ヌきアマビエお姉さん
(たぢまよしかづ/FANZA電子書籍 二〇二〇・〇七・二〇配信)
海辺で怪我をしてしまったショタの前に現れたのは、美しい女医姿をした……。
アマビエさん!!!
ショタの膝の怪我を見たアマビエさんは、「消毒しなきゃね」と舌でペロペロ舐めはじめて……!?

 擬人化されたアマビエが登場するアダルトコミック。サンプルページを見る限りアマビエとされるキャラの容姿(顔立ち)はほぼ人間だが、「海辺に現れる女医」という設定でビエらしさを担保しているものと思われる。

 
《29》妖怪アマビエの線香(お香)が大人気です!
(仏壇・位牌ふたきや公式サイト 二〇二〇・〇七・二五)
コロナウイルスに負けない!みんなで頑張って行こう!と言う意気込みも兼ねて当店では、流行り病や疫病を追い払ってくれると古くから信じられている妖怪アマビエの線香(お香)を祈願線香として販売しております。ご進物(贈り物)としても大変喜ばれている商品を今回はご紹介させて頂きます。【疫病退散】【病魔退散】【悪霊退散】と3種類から選ぶ事ができます。
●疫病退散:原材料【白檀・陳皮】漢方生薬配合
●病魔退散:原材料【白檀・乳香】漢方生薬配合
●悪霊退散:原材料【ローズマリー・ハーブ精油】配合

 ビエの線香の紹介記事。「流行り病や疫病を追い払ってくれると古くから信じられている」という初耳情報に加え、悪霊まで退散させるようになっている。このあたりの時期から、(疫病退散は基本として)権能が拡大していったような印象がある。

 
《30》疫病退散バッジ発売 魚津水族館
(北日本新聞 二〇二〇・〇七・二六)
疫病退散に御利益のある妖怪アマビエと、富山湾で発見が相次いだ魚リュウグウノツカイは似ている? 魚津水族館(魚津市三ケ)は「とがった口」「うろこ」「長い髪(ひれ)」といった共通点に着目し、新型コロナの収束を願うリュウグウノツカイの缶バッジを作った。(略)いずれも海からの使者であり、体の共通点もあることから、同館はリュウグウノツカイを疫病退散の守り神に見立てた缶バッジをデザインした。

 アマビエとリュウグウノツカイはあんまり似てないと思いました(小声)。

 
《31》【大阪府文化芸術活動(無観客ライブ)支援事業】 病除けエンターテインメント アマビエ
(ライブ・エンターテイメント 道頓堀ZAZA 二〇二〇・〇七・二七)

 新作芸能ビエの一例。北林佐和子作・演出、伊瑳谷門取振付による「病除けエンターテイメント」。八月一四日より二週間配信された。

 
《32》岡本太郎美術館 奇想天外な風船たち 休日、屋外にも出現
(神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報誌タウンニュース 多摩区版 二〇二〇・七・三一)
 川崎市岡本太郎美術館で7月23日、企画展「高橋士郎 古事記展 神話芸術テクノロジー」が始まった。(略)エントランスでは動くカブトムシの作品や、新作「アマビエ」が来館者を歓迎。

 ビエはアートの題材にもなる。岡本太郎美術館のビエは最終的に三体に増えたとのこと。

 アート系ビエの他の事例としては、ファッションデザイナーのコシノジュンコデザインの巨大バルーンビエを大阪に展示する計画があり(大阪の街に巨大アマビエ コシノジュンコさんが「打破」 朝日新聞二〇二〇・一一・二九)、クラウドファンディングで資金を募っていたが、コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった。
 
《33》疫病退散!アマビエ、アマビコがキーホルダーになった!「ゲオ限定 疫病退散キーホルダー」
(あらゆるゲームを紹介&攻略!ゲームドライブ 二〇二〇・〇八・〇八)
疫病退散キーホルダーのラインナップは下記の通り。
1.アマビエ/2.アマビコ/3.アリエ/4.くだん/5.ヨゲンノトリ

 この年はビエをきっかけとしてその他の予言獣もそれなりに脚光を浴びており(あくまで主体はビエだが)、それを感じさせるグッズ。「ヨゲンノトリ」はこのコロナ禍でビエに続いて商品化された(と思う)予言獣。名前のキャッチ―さとシンプルな可愛さが強かったのだろうか。

 
《34》ヒツジ250頭でアマビエ 千葉・マザー牧場でイベント
(毎日新聞 二〇二〇・〇八・一三)
 千葉県富津市田倉のマザー牧場で、新型コロナウイルスの退散を願い、飼育しているヒツジで疫病封じの妖怪アマビエを牧草地に描くイベントが開かれている。夜の牧場を体験できるサマーナイトファームで披露される「ひつじの夕焼け大行進」の一コマ。スタッフの合図で約250頭のヒツジが登場し、牧草地の一角に集結。巨大なアマビエをかたどって置かれた固形飼料をヒツジが食べ始めると、アマビエが浮かび上がる仕掛け。

 元々の伝承に従ってか、アマビエを扱った行事では「描いて見せる」ことに重点を置かれるものもあったが、その一例。「ヒツジ250頭でアマビエ」という書き方は召喚のコストを説明しているようにも見えて味わい深い。

 
《35》Dの浅葱、誕生日にLUNA SEA真矢ら参加の新曲「アマビヱ」配信リリース
(音楽ナタリー 二〇二〇・〇八・一三)
Dのボーカリスト・浅葱が自身の誕生日である8月29日に新曲「アマビヱ」を配信リリースする。
「アマビヱ」は疫病を退散させる力を持つとされる妖怪アマビエをコンセプトにした楽曲。(略)“芸術家写真”と称する新たなアーティスト写真では、浅葱がアマビエに扮して波打ち際でポーズを決めている。
 アート系ビエの一例。ここでのビエは青い着物を着た三本足の人魚のようなスタイル。
 
《36》連載 東北のアマビエたち
(毎日新聞 二〇二〇・〇八・一八~)

 東北の妖怪譚を追った連載記事。取り上げられる妖怪はビエにはほとんど関係ないものばかりだが読みごたえがあった。この年の毎日新聞は妙にビエや妖怪関連に対して熱心で、「アマヒユ」、「きたいの童子」、「備後のおじさん(仮称)」などのこれまで知られていなかった予言獣も広く紹介してくれた。助かりました。

 なお、連載の内容は以下の通り。

1 カッパの親分格「スイコ」 つがる 水難の守り神、今も信仰
2 未来占う怪鳥「オドデ様」 岩手 農作業での助け合い、教訓に
3 忠義のキツネ「与次郎」 秋田 飛脚で受難 スポーツの神に
4 謎の毛玉「ケサランパサラン」 山形 苦境の水族館に、幸せ運ぶ
5 湖の主、大蛇「沼御前」 福島 祭りで継承、親しまれ
6 遺体を食べる「疱瘡婆」 宮城 疫病の恐れ垣間見る
 
《37》ローソン銀行のATMから「アマビエ」が印刷される!?
(ローソン研究所 研究所通信 二〇二〇・〇八・二四)
【京都府・滋賀県・奈良県・兵庫県】ローソン銀行のATMから「アマビエ」が印刷される!?(略)ローソン銀行のATMでは、お金のお取引きだけではなくお得なクーポンや様々なコラボレーションで話題を呼んでいるんだ。今回ご紹介するのは、このご時世に少しでもマチを元気に!ということで、ATMクーポンと一緒に出てくる用紙に「アマビエ」の印字を実施するよ。

 コンビニチェーンであるローソンのATMの明細書にアマビエがプリントされることを報じるもの。これを見るために普段使わないATMをわざわざ使いに行ってしまいました。

 
《38》あやかし遊郭~花魁アマビエ民譚集~
(casket‐soft 二〇二〇・〇八・二八発売)
高貴?なアマビエ太夫に癒されH三昧の三日間――妖怪遊廓シリーズ第三弾
妖怪(あやかし)の遊女たちが働く遊郭、あやかし幻楼。癒しとエロを気軽に楽しめる作品をコンセプトとした本作のヒロインは幻楼の古株、アマビエ太夫の『翡翠』。

 アダルトコミックがあるならアダルトゲームもあるビエ。十八歳未満お断りのPCゲームで、アマビエが擬人化された女性キャラクターが登場する。

 
《39》おなかにアマビエ、幸運の日航機 コロナ収束願い運航中
(佐賀新聞LiVE 二〇二〇・〇九・〇四)
疫病をはらうとされる妖怪「アマビエ」をペイントした日航機が、3日から羽田と大阪(伊丹)・那覇などを結ぶ便で運航している。新型コロナウイルスの収束を願い整備士が企画。上空から世の中を見守れるよう、機体の「おなか」の部分に描かれている。

 航空機にビエがペイントされたというニュースだが、見えやすい側面や翼ではなく世の中を見守るという呪術的な意味合いを込めて機体下部に描かれたというのがミソ。公式情報がなかなか出なかったため、市井の飛行機好きが発見してSNSにアップする方が早く、そういう意味でも妖怪的な事例であった。

 

(次の記事に続きます)

新刊小説「みだりに怪異と決めつけてはいけません」11月25日発売のお知らせ

 これもタイトル通りの告知記事です。

 SBクリエイティブ社からこの秋に創刊される新たな文庫レーベル「SB文庫」より、2026年11月25日に、「みだりに怪異と決めつけてはいけません」という小説が出ることとなりました。

(個人的にSB文庫と聞くと、映画「レディ・プレイヤー・ワン」の原作小説「ゲームウォーズ」が出ていたレーベルを思い出すのですが、あれとはまた別のレーベルのようです)

みだりに怪異と決めつけてはいけません

 



不祥事で停職中の刑事の前に現れたのは、やけに怪異に詳しい謎めいた大学院生・聖城美春。
神隠し、釣瓶落とし、河童、猿鬼……
北陸を舞台に未解決事件を紐解くオカルトミステリ。


(公式サイトの紹介文より)

 

 というわけで、停職中の生真面目刑事とオカルト好きの眼鏡大学院生のコンビが北陸の怪異がらみの謎に挑む、連作形式のライトミステリとなっております。

 ちなみにタイトルを略すと「み怪決」、つまり「未解決」となります。だから何だと言われそうですが、まあそういうノリの話です。つまりあんまり重くないです。

 

 カバーイラストはヤマウチシズ様。ホーンテッド・キャンパス」「京都寺町三条のホームズ」などの表紙でお馴染みのイラストレーターさんで、ヒロインであり探偵役である美春を怪しくも可愛く描いていただきました。

 あと、イラストに関しては、背景が金沢市は主計町の「暗がり坂」なのが個人的に嬉しいです。他社の作品になりますが、私が以前手掛けたシリーズ「金沢古妖具屋くらがり堂」で何度も使った場所なんですよね、暗がり坂。

 

 わたくし、一つ前の記事でも書いたように、石川(特に)金沢の妖怪伝承にはしばらく前から勝手に首を突っ込ませていただいておりまして。「金沢妖怪事典」もまとめましたし、2025年1月からは、「つなぐSupport NOTO note」という能登半島の復興支援を目的としたメンバーシップ企画(インターネット上で公開している有料マガジンです。詳細は↓のリンク先をご参照ください)に書き手として参加し、「のと・かが百物語」というタイトルで、石川の妖怪譚や超常現象を扱ったコラムを毎月二本寄稿しています。

note.com

 

 で、今回の「みだりに怪異と決めつけてはいけません」は、そういった事典やコラムを書く過程で得られた知見をフルに使って書いた話となります。主人公コンビの掛け合いを楽しみつつ(いい意味でしょうもないやり取りは書くのも読むのも好きなのでのびのび書かせていただきました)ローカルな怪談奇談の面白さについても知っていただければ何よりです。

「金沢妖怪事典」11月20日発売のお知らせ

 これまたタイトル通りの告知記事です。

 えーと、どこから話したものか。私は滋賀県在住の小説家なんですが、「金沢古妖具屋くらがり堂」「少年泉鏡花の明治奇談録」と、石川県金沢市を舞台にした小説をポプラ社で2シリーズ手掛けたことがあります。

www.poplar.co.jp

www.poplar.co.jp

 

 で、それらを書く時の下調べとして地元の妖怪譚を集めたところ、小説では使い切れないくらい多かったので、それを「私家版金沢妖怪事典」という同人誌にまとめました。2023年のことです。

 

 で、それがこの度、「私家版」が取れた「金沢妖怪事典」として刊行される運びとなりました。ワオワオ。

www.sunrise-pub.co.jp

 

 

 版元は私と同郷である滋賀の出版社、サンライズ出版。このサンライズ出版から、私は2025年に「滋賀県妖怪事典」という本を出したのですが、今回の「金沢~」はこれの続編(?)に当たります。

 

 今回、新たに商業刊行物として出すにあたっては、同人誌版をベースにしつつ、大いに手を加えさせていただきました。

 

1.イラスト追加

 カバーイラストは同人誌版や「滋賀県妖怪事典」に引き続き、漫画家の久正人様にお願いし、本文中の挿絵も描き下ろしていただきました。

 奇麗なもの、儚いもの、威厳のあるもの、怪獣っぽいものなど、色々描いていただきましたので、久さんのファンはご期待ください。

 

2.項目数拡大

 同人誌版では608項目だったのが、全809項目まで増えました。単純計算で201項目も増えております。

 なお、同人誌版から採録範囲や基準を変更したことに伴い、「私家版」の時から削除した項目もあるので、追加項目は実際はもっと多いです。

 809という中途半端な数字なのは、最初は800でキリよくまとめるつもりがズルズル探し続けてしまったからです。

 

3.採録範囲も拡大

 民俗雑誌や聞き取り調査の報告書などはもとより、「三州奇談」「奇事談」「冬夜物語」といったご当地奇談集、「鶴村日記」のような近世の日記、戦前戦後の自治体史、地区単位で刊行されたローカルな郷土誌(公民館や婦人会発行のものなど)、さらには泉鏡花や五木寛之(敬称略)など金沢ゆかりの文人が語った話、地方紙で報道された怪事件・超常現象等々まで、できる限り拾いました。

 さすがに文献が残っていない時代のものはお手上げですが、江戸時代以降の(文面として残された)金沢の怪談奇談はほぼほぼカバーできていると思います。思いたい。

 

4.コラムあり

 金沢の妖怪の特徴や、調べていて気付いた事などをまとめたコラムを9本掲載しています。

 同人誌版にもコラムは付けていましたが、今回全て新たに書き起こしました。とりあえずコラムだけ読めば金沢の妖怪についてはざっくり把握できるようになっております。

 

5.索引強化

 事典に欠かせない索引については、「地名別」「施設・場所別」「種類別」の三種を設けています。同人誌版の内容をベースにしつつ、索引項目数や範囲を全面的に見直しました。

 特に注目いただきたいのは、「施設・場所別」索引。

 これは読んで字のごとく、「○○城」「○○神社」「○○山」「○○川」のように、その妖怪が出た施設や場所で引ける索引で、細かい町名までは把握していない方にも使い勝手のいいものとなっております。多分。

 金沢はご存じのように観光地でもありますから、県外市外の方におかれましてはぜひ観光のお供としてご活用いただれば幸いです。僕もそのように使うつもりです。

 

 石川県は元々怪談奇談の多い土地という印象がありますが、中でも金沢は、文字記録を残す習慣を持ち、なおかつ怪異に興味がある人が多かったのか、その手の話が大量に残っています。しかもそれらの内容が逐一具体的で細かいんですよね。

 さらに今も城下町時代の道筋や川筋が結構残っていますので、「ここであれが出たのか!」という現地探訪がやりやすい土地でもあります。

 一市町村単位の妖怪事典、しかも作者は県外の人間というニッチな本ではありますが、金沢の妖怪伝承の面白さを広めるお役に立てれば何よりです。

 

コミック版「最後の陰陽師とその妻」2巻、10月30日に出ます

 タイトル通りの告知記事です。

 カドコミ他で連載されていた、山田ツナ子様による漫画「最後の陰陽師とその妻」の2巻が2026年10月30日にB's-LOG COMICSより発売となります。

 

最後の陰陽師とその妻2

 

 原作はわたくし作の同名小説で、漫画版はこの2巻が最終巻となります。

 大団円です!という感じのカバーイラストがいいですね。二人に幸あらんことを。

 山田先生におかれましては作中の二人の表情を細やかに描いていただきまして、そもそも作者というのは基本的に自分の書いた話が好きなわけですから、監修担当の原作者としてだけでなく、一読者としても最後まで楽しませていただきました。

 この場をお借りして改めてお礼を申し上げます。

 

 なお、原作小説の方では漫画になっていない続きのストーリーがございますので、ご興味がございましたら小説「最後の陰陽師とその妻 2」もどうぞよろしくお願いいたします。 

アジア遊学325「柳田国男と妖怪」に寄稿しました

 勉誠社から2026年9月末に刊行された論考集「アジア遊学325 柳田国男と妖怪」(石井正己・香川雅信編)に寄稿しました、というお知らせ記事です。

 

bensei.jp

 

 以下は公式サイトより引用した本書の紹介文です。こういう本です。

柳田国男と妖怪、というテーマは、意外なことにこれまであまり論じられてこなかった。
しかし実際には、柳田はかなり初期の段階から妖怪に強い関心を持っており、昭和初期にその民俗学が明確に体系立てられた時には、最も重要な意味を与えられることになったのである。
「妖怪」は、柳田国男の「最初の疑問」であり、その民俗学の隠れた原動力でもあった。そして「最後の失望」であり、いまだ解き得ない謎として、その後も残されたのである。
柳田はどのようにして妖怪に興味を持ち、研究を進めていったのか。
柳田国男の手になる妖怪辞典として受容されている「妖怪名彙」の本意はどこにあったのか。
現在、柳田国男の妖怪研究はどのような形で活用されているのか。
「柳田妖怪学再考」「『妖怪名彙』の逆襲」「拡大する柳田国男」という三部により、「柳田国男と妖怪」の過去・現在・未来をそれぞれ見通し、柳田国男の思想を俯瞰しつつ、その「妖怪」に関する思考について論じる。

 

 なお、目次はこういう感じです。(こちらも公式サイトよりの引用です)

はじめに――柳田国男の妖怪研究と本書の位置づけ  香川雅信

第1部 柳田妖怪学再考
柳田国男と播磨の怪談  石井正己
『妖怪談義』の地層を読む  佐藤健二
声の文化としての妖怪――柳田妖怪論を読み直す  伊藤龍平
【コラム】柳田国男と七不思議  横山泰子
よみがえる残存――妖怪の症状的時間性  廣田龍平
平田篤胤と柳田国男の妖怪観――幽冥への視座をめぐって  今井秀和
青森の河童・北海道の河童――柳田国男が向けた「メドチ」と「ミンツチ」への視線 
太田原潤
【コラム】青森における近世の河童関連資料  太田原潤
柳田国男の「祟り」論と『郷土生活研究採集手帖』  大江篤

第2部 「妖怪名彙」の逆襲
「妖怪名彙」をさかのぼる  化野燐
「妖怪名彙」のコナキジジ  香川雅信
小豆洗い隨考  木場貴俊
妖怪名を収集する――『現行全国妖怪辞典』についての一考察  木下浩
【コラム】「スナカケババ」の謎――奈良の話を中心に  木下昌美
奈良のジャンジャン火――怪火伝説の特徴と意味  齊藤純
ツチコロビについて――「妖怪名彙」における視点の考察と現在の伝承 小林光一郎

第3部 拡大する柳田国男
活用される柳田国男――創作の中での日本民俗学の父の軌跡  峰守ひろかず
【コラム】韓国の妖怪研究における柳田国男の可能性  金容儀

【附録】「柳田国男と妖怪」参考文献目録  沖山槙之介

 

 上記の目次の通り、第3部「拡大する柳田国男」に掲載された「活用される柳田国男――創作の中での日本民俗学の父の軌跡」が私の書いたものとなります。

 

 タイトル通り、柳田という研究者やその研究成果は近現代以降のフィクションで何がどう使われてきたか(何が使われなかったのか)を概観する内容で、具体的には、泉鏡花、水木しげる、荒俣宏、横溝正史、五木寛之、手塚治虫、井上ひさし、諸星大二郎(順不同・敬称略)などの作品を取り上げております。

 柳田の研究成果を活用させまくってもらっているイチ創作者として、リスペクトと申し訳なさを込めつつ書きましたので(その手のジャンルがお好きな方には既知の話ばかりかもしれませんが)ご笑覧・ご活用いただければ幸いです。

 

 編者の石井・香川両先生以下妖怪研究界で名を知られた先生方が揃っておられる中に研究者でもない人間(私です)が混じっており、しかも3部の論考担当は私だけというのは何とも恐縮というか申し訳ないところもあるのですが、声を掛けていただけたのはたいへん光栄でした。改めてお礼を申し上げます。