奈良県立美術館50周年記念特別展「仮面芸能の系譜」が特撮好きとしてすげえ面白かった!という記事です。
今回の展示で「伎楽」というジャンルを初めて知ったんですが、これ、顔面だけを隠す面じゃなくて、後頭部から顎まで覆うフルフェイスの仮面を使ったんだそうで。
これに使われた面は立体としても面白いんですが、人形に衣装を着せて面をかぶせたマネキンや写真がまた良くてですね。
いわゆる能面タイプのお面だと、見た時の印象が「顔を隠して演じてる人」止まりなのに対し、フルフェイスだと「そういう顔のモノ」に見えるんですよ(個人の感想です)。少なくとも「これは人間じゃないです! こういうやつです!」と言い張ってる感じは伝わってくる。かつ頭が異様にデカいのでその違和感が怖い!
というわけで面白かったんですが、同時に「これ、知ってるやつだな」とも思ったわけです。たとえばゴレンジャーの仮面怪人(中盤以降の頭がやたらデカい連中)。たとえばキラメイジャーの邪面たち。
印象として一番近いのは「行け!牛若小太郎」の妖怪でした。要するに物凄く特撮の文脈に見えるんですね。
そもそも伎楽に用いられた面には迦楼羅があって、ウルトラマンの初期案のベムラーはかなり迦楼羅様なので、その時点で「知ってるやつだ!」と思ったのですが、その「知ってるやつだ」感がずっと続く展示でした。
たとえば展示の後半には実際にレプリカを被れるコーナーもありまして、被ってみると面は顔にみっしり密着するし視界は狭いし、特撮の本でよく見聞きするスーツアクターさんの視界や感覚が体感できるわけです。
また、大和の猿楽コーナーでは今も各所に伝わる「翁」が紹介されていましたが、この「翁」、最初から面を付けて出てくる、つまり「こいつはこういう顔のモノですよ」というエクスキューズを用意する……のではなく、面と演じ手が別々に出てきて舞台上で面を付ける、つまり「人間が神(だか何だかよくわからないモノ)になってます」という過程を見せる芸能だそうです。
これもまた、怪獣やヒーローの中に人が入っていることを隠さず、その上で面白がらせようとする和製特撮のスタンスと通じるものがあるのではないかという……。
まあこれは適当なでっち上げなので信じないでほしいんですが、「人が人でないものを形作って演じようとするとどうなるか」というジャンルに親しんできた身としてはめちゃめちゃ面白い展示でした。
あと、ジェットジャガーはここに混じってても違和感なさそうだな……とも思ったことです。目つきや口元が伝統芸能っぽいんですよね。