峰守雑記帳

小説家・峰守ひろかずが、見聞きしたことや思ったことを記録したり、自作を紹介したりするブログです。峰守の仕事については→ https://minemori-h.hatenablog.com/

ニジカガチは良い伝奇怪獣でしたという話

 いやー良かったですね怪獣ニジカガチ。

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 私、大きく風景を移した絵の中にでかいものが(「暴れている」ではなく)そこに「いる」というビジュアルが好きなので、台風の目の中をゆっくり歩くだけのニジカガチは設定からして良かったし、その「そこにいる」感を引いた絵で何度も見せてくれた前編は特に眼福でした。本編も風景を大きく見せるロングショットが多くて見応えあったなあ。欲を言えば各地の台風の被害の様子も特撮で見たかったなーというのはありますが。

 操ってる横峯先生も良かったですね。よくある「人間も自然の一部」で言い負かされないところが強いし、「言ってることは分かりますが自分は個人的に死にたくない、みんなそうだ」という個々人の思想で反論する流れも良かったですし、そこで一回納得してもなお負けなかった教授は大変立派でした。やり方がちょっと乱暴だっただけなので、これに懲りずに再チャレンジ頑張ってください。

 正直、今年の猛暑を体験してると、人類の文明の方向が間違ったと言われてもちょっと納得できてしまうわけで。だからこそ、ラストには主人公たちが何かしら行動を改善する展開は欲しかったかなーとは思いますが。ニジカガチ様怒るよ!

 あと個人的にグッと来たのは、劇中ではサラッと流されましたが「ニジカガチは古墳時代に日本で文明をリセットした」という設定。つまり大和朝廷はニジカガチ様のお暴れなさった後に漁夫の利をかっさらい、その後に天孫降臨以降の神話を遡って創作したことになるわけで、これはあなた相当ロックな設定ですよ。

 伝奇ものの面白さって「知らない歴史を聞かされる」もありますが、「知ってる歴史がひっくり返る」ところが大きいと思うわけで、それをサラッとやってくれたニジカガチはだいぶグッと来ました。ブレーザーはスタンス的には結構保守的なウルトラマンだと思ってたんですが、こんな設定が飛び出して来るとは思いませんでした。ニジカガチ、最終的にも死んでなさそうだし、所詮我々はニジカガチの気紛れに授かっているだけなんですよ。ソフビ買って拝もう。

 ウルトラマンブレーザー、楽しんでるとは言えそこまで熱狂してるわけでもないという感じだったんですよね。怪獣の設定や見せ方は好きですが、個人的な好みで言うとドラマパートがもうちょっとにぎやかになってほしい(具体的に言うともっと対立してほしい)というのがなんとなくあります。

 皆さん物分かりが良くてクレバーで、大変いい職場だとは思うんですが、今回だったら博士の処遇を巡って副隊長が声高に反対するとか、カナン星人回ならコインランドリーの乾燥機を信じられるかどうかで言い争うとか、それくらいの掛け合いはあってもいいんじゃないかなーと。空気の悪いチームが好きなわけじゃないんですが、ハヤタとイデとアラシ程度の意思の揃わなさがあっても良くない?みたいな。あとウルトラマンブレーザーについても「あいつ何なんだよ」という話にならないのは意外でした。調べようよ。

 とはいえゲードスとか山怪獣とか伝奇要素がやたら多いのはその手の話が好きな身としては素直に嬉しいですし、今回のニジカガチ回は日本史を揺るがす話だったので楽しゅうございました、というだけの記事でした。

 次回のガラモン回は「妖怪大戦争ガーディアンズ」でお馴染みの、もっと具体的に言うと試写会で見て度肝を抜かれ、こんなことならスピンオフでフィーチャーするべきだった!!とスピンオフ小説の書き手(僕です)が悔やんだあの東儀秀樹さんがゲストだそうで、これももう伝奇回みたいなもんだと思います。