「金沢の奥座敷」こと湯涌温泉をモデルにした温泉街が舞台の高校生仲居奮闘アニメ「花咲くいろは」の全話と劇場版が無料配信されており、それを先日見終えました、という日記です。
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— 「劇場版 花咲くいろは HSH」公式 (@hanairo_hsh) 2024年1月11日
#花咲くいろは シリーズ一挙
📺チャリティー配信決定📺
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この動画の収益は湯涌温泉を通じて
震災からの復興に使用されます。
1月12日(金)18:00よりプレミア公開‼️https://t.co/9hxIneZuzQ#hanairo pic.twitter.com/zZ5z5omPZC
正確に言うと、まず全編26話を鑑賞し、最終話を二回見た後、劇場版の予告編を見た上で数日間のインターバルを挟んで劇場版を見て、さらに後日談にあたるノベライズ(電子書籍で全6編)も読みました。終わった。終わったよ。
「花咲くいろは」、湯涌温泉にもポスター貼られてたんでタイトルだけは知ってたんですが、逆に言うとそれしか知らず(主人公の名前が「いろは」じゃないことにまず驚いた程度に何も知りませんでした)、気になってはいたものの見るタイミングがなかった作品だったので、チャリティー配信に乗っかって拝見させていただきました。ありがとうございます。
舞台のモデルであることろの湯涌温泉は、拙著「金沢古妖具屋くらがり堂」の取材というかネタ探しというか物見遊山で行ったことがありまして、いかにも昔ながらの温泉街って風情の素敵な場所だなあと思ったので、作中にも一回出してます。
またアニメ本編にも何度か出てくる金沢市街(いわゆる「マチ」ですね)は、「くらがり堂」全編や「少年泉鏡花の明治奇談録」で使わせてもらっているので、見覚えのある景色がちょくちょく出てきて楽しかったことです。香林坊にある「Q」が走ってるみたいなオブジェとか印象に残りますよね。
もともとP.A.WORKSのお仕事アニメは「白い砂のアクアトープ」や「駒田蒸留所へようこそ」は楽しく見ておりまして、特に「アクアトープ」の中盤で主人公たちの居場所であり働くモチベーションだった施設が無くなってしまい、「お前はこの場所を維持したいだけだったのか? それともこの職業が好きなのか?」と追い詰められる展開には強く感銘を受け、自作で「くらがり堂」を焼きそうになったことがあります。やらんで良かった。
「花咲く~」に話を戻しますが、面白かったです。旅館が舞台の仲居ものってことで、「奉仕精神」とか「おもてなしの心!」みたいなのを推されると若干引いちゃうんだよなーとか失礼なことを思いながら見始めたんですが、ドラマの中心はあくまで旅館に集った各々の内面や葛藤で、老若男女、老人も青年も少年少女もみんな色々あるんだよ色々! 完璧なやつはいないけどみんな頑張ってるんですよ! なあ! という話でしたので素直に共感できたし、ガーッと行動に出てしまえる主人公が好きなので、大いに応援しつつ見終えることができました。いや、いい子でした主人公の緒花さん。一人で上京してプラカード持って座り込むところが特に好き。
あと、金沢が舞台の古い店でバイトする高校生の話を書いてたり、古い施設や職場で働く話を色々書いてた身としては「あー、職人になりたいから高校に行かないって言い出す一見クールな激情ツンデレいるよねー」とか「最後はやっぱ施設のボスとの対決になるよなー」とか「で、その後に、なんでその場所が出来たのかって話になりますよねー」とか、物語の流れにも勝手に共感しながら見てました。わかるわかる。
舞台を含めて世界観や登場人物たちにだいぶ感情移入してただけに、旅館が閉まって主人公が東京に帰ることになる最終回は(話の流れとしてそうなるのはすごく分かるんですが)けっこうな寂しさがあり、あと、せっかく北国が舞台なのに冬のエピソードやらないのはもったいなくない? とも思ったんですが、その後の劇場版(時系列的には最終回前)のクライマックスで、決意しながら雪をザクザク踏みしめて歩くシーンがあって、なるほど、ここのために冬のシーンを取っておいたのだなと納得。このエピソードが最後にあるおかげで前向きな印象で見終えることができるわけで、ワザマエな構成です。
さらに後日談にあたるノベライズでは、数年ぶりに集まるシーンで、あくまで旅館を再興したい主人公に対し、それぞれ自分の人生やってるかつての仲間はあくまで同窓会気分で……と食い違うあたりの世知辛さが良かったですね。
町おこし要素としてトリエンナーレ的な事業を持ってくるのも納得感があり(アートをどう見せる?という話も好きなので面白かったです)、主人公がようやく誰かの真似じゃない生き方を模索し始める流れも心地よく、気持ちよく読み終えることができました。もともと金沢にはまた行くつもりでしたが、足を伸ばしたいところが増える作品でした。
正直、実を言うと最後まで見ても(読んでも)「花咲くいろは」というタイトルの意味が今一つピンと来ていないところもあるんですが、これは持ち帰って考えてみようと思います。